サイレントミーティングの方法

 まず、沈黙は、ブレインストーミングやアイデア出しが必要な議題に、特に適している。

 ブレインストーミングを行うとき、公正を期すために沈思黙考を促す。つまり、参加者は個人単位でアイデアを考える。従来の会議形式では、それぞれの参加者が、どの程度会議に貢献しているかがあからさまだが、このアプローチでは一定の匿名性を保ち、記名などによって個人を特定する必要はない。

 回答を集めた後に、集めた情報をどうするかについては、選択肢がいくつかある。

 まずできることは、コンセプトの似たアイデア同士を集めることだ(クラスタリング)。1クラスタの目安として、アイデア1個から20個くらいまでが妥当だろう。クラスタリングは会議の中で行ってもよいが、次の会議の直前に行うのが最も効率がよい。その後メンバーにクラスタを示し、どれをどの順番で議論するかを決める。

 第2のアプローチとして、投票を行い、人気のないクラスタをそっくり没にすることもできる。壁や掲示板、グーグルドキュメントやアプリなどを使ってメンバーにクラスタを提示し、気に入ったクラスタ(1つまたは複数)に投票させる。各クラスタの票を集計し、支持の多かったクラスタをグループディスカッションで検討する。この投票法ではアイデアの数が絞られるため、全員参加の民主的な方法をとりながら、メンバーの時間を節減することができる。

 第3のアプローチでは、沈黙をさらに進める。ポスター大の紙にアイデアまたはクラスタを1つずつ記載し、壁やデスク(またはアプリ)に貼りつける。それぞれに一定の独立性を持たせるために、部屋全体を使い、間隔を空ける。

 メンバーは、ペンを片手に部屋の中を巡回し、コメントを書き入れたり、アイデアを発展させたりする。コメントや提案は「実現性に疑問」や「こんな捻りはどうだろう」「すごくいいアイデア」など、さまざまでよい。

 そうして「筆談」をしながら部屋を回るが、アイデアの発案者や他のメンバーも、フィードバックや批評に答えてもいいし、答えなくてもかまわない。コメントの積み重ね、文章の連なりを通じて、基本的には筆記で議論が行われる。コメントの記載が途絶えたところで終了となる(通常15?20分)。

 この方法は、参加者の興味をそそり、ユニークでインタラクティブ(双方向的)、インクルーシブ(包摂的)、エンゲージングで、時間を効率的に使うことができる。

 話し合いをせず、紙と鉛筆も使わない会議も、手軽に入手できる既存の携帯アプリやPCアプリで簡単に実施できる。こうしたアプリを使えば、出席者の発言を簡単に記録し、会議の現場以外で議論を進めることも可能だ。他に役立つ機能として、リアルタイムの匿名投票、アイデアの分類やランク付け、匿名のコメント投稿、会議内容のダウンロードなどがある。

 最後に、どの沈黙ベースのアプローチも、対面式の会議に先立って行ってもよい。会議の数日前に情報を集め、集まった内容を会議で発表するといった使い方ができる。

 メンバーから寄せられた手厳しい重要な少数意見を、効率的かつ効果的な方法で活用するために、できる限りのことをするのがリーダーの務めだ。

 極端に言えば、リーダーは他人の時間を預かり、管理運用している。だから継続的にフィードバックを求め、会議の参加者から学び、改善し、成長しよう。会議というと、何も考えずに従来のやり方を踏襲する場合がほとんどだが、沈黙ベースの手法を知れば、選択肢が広がるうえ、よりよい成果を挙げられることも調査でわかっている。個別のブレインストーミング、クラスター手法、無記名投票、書くコミュニケーションなどの活用は、リーダーのレパートリーを広げ、パフォーマンスを高める。

 もちろん沈黙は、話し合いに完全に取って代わるべきではないが、使う場面を選べば役に立つ。会議を成功させるうえでも、「沈黙は金」になりうるのだ。


HBR.org原文:The Case for More Silence in Meetings, June 14, 2019.

■こちらの記事もおすすめします
会議の生産性を上げるにはデザイン思考を取り入れよう
内向的な人、リモートワーカー、女性…会議で軽視されがちな3タイプの人たち
時間を無駄にするだけの会議を避ける5つの方法
気乗りしない会議の誘いを上手に断る方法

 

スティーブン G. ロゲルバーグ(Steven G. Rogelberg)
ノースカロライナ大学シャーロット校教授。大学総長賞受賞。近著にThe Surprising Science of Meetings(未訳)がある。リーダーシップ、チーム、会議、エンゲージメントに関する著述、講演多数。詳しくはLinkedIn

リアナ・クリーマー(Liana Kreamer)
ノースカロライナ大学シャーロット校博士課程学生。スティーブン G. ロゲルバーグ博士の指導下で組織科学、特に会議の手法や頻度、リーダーシップスタイル、チーム力学を研究。詳しくはLinkedInまたはUNCC大学院生ウェブサイト