多くのプラットフォームが失敗するなか、ウィキペディアが成功している理由を理解することは、「概念実証」を記録すること以上に重要だ。これは、ウィキペディアがオンライン百科事典の分野で独占状態にあり、自分の声を反映させたいなら協力しなければならないせいもあるだろう。しかし、それ以外にも明確なパターンが存在する。
二極化したチームが「方針とガイドライン」に頻繁に訴えていることは(違反すると編集に参加できなくなる可能性がある)、監督と事務手続きの拡大がプラスになる可能性を示している。法律が存在しないか、規範が弱いコミュニティやメディア環境では、会話が短くなったり、コラボレーションが少なくなったりして有毒な環境が生まれ、質が低下する可能性が高まる。
もう一つ、ウィキペディアのユニークなところは、ディスカッションとコンセンサスへのコミットメントだ。このようなミッションを前面に押し出していることが、公益のために協力する意欲がある編集者だけが参加する状況を生み出しているのかもしれない。
ウィキペディアの「方針とガイドライン」は、質の高い記事だけでなく、持続的な協働文化を生み出している。「方針とガイドライン」は、何を書いてもいいかのルールであるだけではなく、社会的に適切な行動(ノートページでの編集者どうしの振る舞いや、私たち研究者がコミュニティーに関与する必要性など)を定めることによって、文化をつくっている。
本研究を行う権利を得るのも大変だった。ウィキペディアのコミュニティを理解するためには、そのメンバーにならなければいけないというのだ。しかし、こうした保護措置があるからこそ、ウィキペディアには多様性のパワーを解き放つ余地がある。
ひょっとすると、私たちの研究の最大の成果は、バイアスについて新たな視点を得られたことかもしれない。個人レベルでは、バイアスは悪い投資と間違った結論をもたらすものであり、総じて好ましくない。しかし、それが情熱に牽引されると、自分が信じることのために、より長時間、より懸命に働くことへとつながる。また、バイアスは、同じようなイデオロギーを持つ人たちの集まりで形成される有益な情報や視点へのアクセスを可能にする。
さまざまなバイアスを持ち、関与やコラボレーションの意欲がある人が集まったチームは、集合的に優れた成果を生み出せる。これは、現在のように二極化した時代の政治的多様性と不一致に、「希望の兆し」を示す発見である。たとえ米国や世界で政治的二極化が進んでも、相手方にも言い分があることに気がつけば、その議論は、参加者個人よりも賢いものになるだ。
HBR.org原文:Are Politically Diverse Teams More Effective?, July 15, 2019.
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フェン・シ(Feng Shi)
ノースカロライナ大学チャペルヒル校オーダム社会科学研究所データサイエンティスト。
ミーシャ・テプレツキ(Misha Teplitskiy)
ミシガン大学情報大学院(UMSI)助教。
イーモン・デュード(Eamon Duede)
シカゴ大学哲学科博士課程学生。同大学科学概念・歴史研究委員会。
ジェームズ A. エバンス(James A. Evans)
シカゴ大学社会学教授。ナレッジラボ所長。コンピュータ社会科学プログラム創設部長。サンタフェ研究所客員教授。