最大のポイントはデータを一気通貫で利用できる仕組み作り
Dynamics 365が提供するのは、主要な業務の機能ではあるが数ある業務の一部に過ぎない。そのため、煩雑な業務は数多く残ってしまう。そこでマイクロソフトが注力しているのが、Microsoft PowerApps、Flow、Power BIの3つのサービスで構成されるPower Platformである。Power Platformを使えば、ITスペシャリストではない現場の担当者が、ITを活用してDXを内製で推進することが可能になる。
PowerAppsは、PowerPointやExcelの関数の知識があれば、プログラミング不要でビジネスアプリケーションを作ることができるサービス。またFlowは、アプリケーション開発の知識がなくても、簡単なコーディングで業務フローを自動化することができるものだ。さらにPower BIは、データサイエンティストの知識がなくてもデータ分析が可能だ。データを可視化、共有して、正しいアクションを起こすことができる。
Power Platformの最大のポイントは、デジタルフィードバックループのどこからでもデータを収集できることだ。提供済みの250種類以上の標準コネクタを利用することで、サイロ化した既存システムをデジタルフィードバックループにつなぎ、使えるデータを収集することができる。システム開発の知識があれば、独自サービス用のカスタムコネクタの作成も可能だ。
大谷氏は、「DXを加速するために、まずやるべきことは、サイロ化しているビジネスデータを一気通貫で使える状態にすることです。AIやIoTなど、さまざまな先進技術がありますが、データを収集できなければ有効に活用することはできません。まずはレガシーシステムに眠っているすべてのデータをクラウドに上げて、DXの基礎を作ることが必要です」と話す。
マイクロソフトでは、収集したデータを、セキュリティに配慮した上で、さまざまなアプリケーションで利用しやすい形で蓄積するCommon Data Serviceを提供している。Common Data Serviceを利用することで、データの活用/連携が非常に容易になり、デジタルフィードバックループのためのベースを実現できる。これによってはじめて、クラウドを活用して、お客様とつながる、社員にパワーを、業務を最適化、製品の変革という、4つのDXが可能になる。
例えば、あいおいニッセイ同和損害保険では、紙を起点とした業務プロセスが中心で、各種申請、報告、部門間の連携業務に手作業が残っていた。この現状を打破するために、Microsoft Dynamics 365を全社導入し、業務の徹底した自動化を提案した。これにより、2021年度までに約138万時間の余力を創出し、よりクリエイティブな業務に注力できる環境を構築するほか、年間約1200トン使用しているコピー用紙の大幅な削減を目指している。
大谷氏は、「DXの実現で重要なのはデータです。企業内に散らばるデータを、一気通貫で利用できる仕組み作りが最大のポイントです。これはマイクロソフトだけでは実現できません。そこで2018年11月、アドビシステムズ、SAPとの協業で、Open Data Initiativeという取り組みを発表しました。これにより、システム間の障壁を取り除き、分断されたデータを連携して、ビジネスの可能性を最大限に引き出すことができます」と話している。
DXはどんな業種の企業にとっても避けては通れない。企業経営者はDXの第一歩として何をすべきか。それはまず、事業の業務フローを見直しデータ化すること、部署ごとにそれぞれバラバラに蓄えられたデータは一つにまとめ、社内のだれでも使える形に作り替えることである。そうすることで、次に打つべき一手が見えてくるはずだ。
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