アクセンチュア戦略コンサルティング本部M&A統括マネジング・ディレクター横瀧崇をモデレーターに、KDDI傘下のSupershipホールディングス執行役員CSOで数多くのM&Aをリードしてきた八重樫健氏、2017年にSupershipホールディングス傘下に加わり急成長中のMomentum代表取締役高頭博志氏、アクセンチュアでオープンイノベーションを推進するアクセンチュア戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクター廣瀬隆治の3名が議論しました。

CVCとスタートアップが
GOALに求めるものとは

横瀧:「デジタル時代のCVC~先進事例から浮き彫りになったValue upの壁」では、「CVC価値最大化検討のフレームワーク」をご紹介しました。このフレームワークは、「GOAL」「STRATEGY」「EXECUTION」の3つの要素からなります。そして「GOAL」では、ファイナンシャルリターンとストラテジックリターン、この両方を追求することが重要であるというお話がありました。そこでまず、事業会社としてのスタートアップとKDDIグループの中でのCVCの役割、2つの側面をお持ちのSupershipが「GOAL」に関してどのような認識を持っていらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか。

Supershipホールディングス株式会社
執行役員CSO
八重樫 健 氏

八重樫:「GOAL」は、ファイナンシャルリターンとストラテジックリターンをどう求めるかという話でしたが、これは、多くのCVCが非常に悩まれているポイントだと思います。ここからはあくまでもSupershipとして過去振り返ってみるとこういう形がよかったのではないかということでお聞きください。

 基本的に、1つの案件の中でファイナンシャルリターンとストラテジックリターン双方を両目的として持つというのは難しいことだと思っています。ですから、ファンドの中でのポートフォリオとして、ファイナンシャルリターンとストラテジックリターンそれぞれを求める案件をどのくらい作るかという形で決めるのが良いと思います。ストラテジックリターンならばストラテジックリターンのみを求め、ファイナンシャルリターンならばファイナンシャルリターンのみを求めると決めて、投資を行っていくことが重要です。

横瀧:では、高頭さん、創業者としての視点ではいかがでしょうか。

Momentum株式会社
代表取締役社長
高頭 博志 氏

高頭:弊社が資本出資を受けたケースでは、Supershipは弊社の持つケイパビリティがM&Aの目的であり、お互いの利害を一致させることができました。ただ、スタートアップの経営者としては、やはりM&A後の売上が何よりも大事だと思っています。さきほど八重樫は「M&A成功の定義は、M&A後にその会社が伸びたかどうか」と申し上げましたが、本当に売上は重要な要素です。

 なぜなら、スタートアップの辛さというのは売上を増やすことだからです。M&Aは、社員にとって一つの大きな転換期でもあります。ですから、自分たちが資本出資を受けて幸せになったことを実感できるのは、その後の事業成長にあると思います。ストラテジックリターンを狙いながら、一企業としてしっかりと売上を伸ばしていくというのはとても重要です。