事業部側からの要望が
最もM&A成功確度が高くなる

横瀧:次の「STRATEGY」では、投資方針を中心にお伺いしたいと思います。八重樫さん、いかがでしょうか。

八重樫:まず一つは、廣瀬さんのコメントに重なりますが、我々がM&Aするときには、我々が成長するためというよりも、出資した会社をどう一緒に成長させられるのかという視点を強く持っています。その意味で、我々が提供できるアセットが何かをあらかじめ明確にしておく必要があります。

 もう一つ、M&Aには、戦略上必要なピースを決めてロングリスト・ショートリストを作って交渉を進めるという正攻法、証券会社や銀行・VCからの紹介、事業部側からの要望、と3つの入り口があります。これまで十数社のM&Aを行いましたが、この3つの入り口の中で一番成功確度が高かったものは3つ目の事業部からの要望でした。なぜならば、M&A前に後に本質的なビジネスDDができていることと、M&A後にしっかりとシナジーを提供していけるからです。

 事業部の要望の場合、自分が上げてきた案件ということで事業部側がコミットします。責任をもってその会社と一緒に成長していこうという気持ちが十分に醸成されているので、事業部側もM&Aを成功させようと自社のアセットを使いながらPMIに一緒に取り組んでくれるのです。これが重要なポイントですし、この循環が回り始めていることは我々の強みと言えるでしょう。

アクセンチュア株式会社
戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター
廣瀬 隆治

横瀧:廣瀬さん、「STRATEGY」ではピントを合わせるということで、荒すぎてもダメだし、フォーカスしすぎてもダメというお話でした。そこから何か感じることはありますか。

廣瀬:事業部から出た案が最も成功率が高いという話は、ものすごく示唆的ですね。問題はその状態にいたるまでどう持っていくかですが、それには成功体験・成功事例を作り出すことが必要です。

 それまでスタートアップと競争をしてこなかった企業や部署にとって、具体的な競争のプロセスやシナジーの作り方は概念としてわかっていても、なかなか肌感として持てないかと思います。ですので、具体的なケースを作ることが重要となります。