では、どうすれば因果推論AIは、医療においてより中心的な役割を果たせるようになるだろうか。

 まず、AIが幅広い分野で使えると理解することが重要である。医療業界のリーダーたちは、専門知識のある会社や研究者とともに、因果推論AIが最大の効果を発揮できる課題は何かを突き止めるべく、時間をかけて探究する必要がある。そのうえで、この手法をいくつかのケーススタディでテストするのだ。

 次に、データがカギを握る。自宅出産に関するイニシアチブでは、意義ある結果を得るために必要なデータを獲得できたが、適正なデータを手に入れることは簡単ではない。信頼に値する結果を導く因果推論AIの能力は、正確かつ代表的データを得ることにかかっている。

 AIモデルが賢くなるように訓練することはできるが、それは適切な母集団を代表する良質のデータを提供し、他のデータセットと統合させて、適切な対照グループと比較できる場合のみである。医療関連組織は、アルゴリズムに必要なデータのインフラ構築に投資する必要があるあろう。

 因果推論AIを使って「なぜか」と質問すれば、データのパワーを使うことで、病気を引き起こす最も重要な因子の複雑さを解明する新しい手法が生まれる。この作業を行うアルゴリズムをつくることは、予測アルゴリズムをつくることよりも難しい。しかし、これは試してみる価値があるだけではなく、必要なことでもある。


HBR.org原文:Using AI to Understand What Causes Diseases, November 08, 2019.

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セマ・スゲイア(Sema Sgaier)
サーゴ・ファウンデーションの共同創始者兼エグゼクティブディレクター。ハーバード公衆衛生大学院非常勤助教授。ワシントン大学グローバルヘルス客員助教授。

フランチェスカ・ドミニチ(Francesca Dominici)
ハーバード公衆衛生大学院生物統計学・公衆衛生・データサイエンスのクラランス・ギャンブル記念講座教授。ハーバード大学データサイエンス・イニシアチブ共同ディレクター。全米医学アカデミー(NAM)のメンバー。