対応策を練っておく

 新型コロナウイルス危機は間違いなく、大規模なサプライチェーンの混乱への対処法について、新たな知見を得るきっかけになるはずだ。比較的初期の現段階でさえ、この種の危機への対応をめぐる重要な教訓を引き出すことができる。それらを今後、実地に活かすべきだ。

 ●すべてのサプライヤーを把握する

 上流工程の何段階にも及ぶサプライヤーの相関図を作成しよう。これを怠る企業は、いざ危機に直面したとき、十分な対応や影響予測ができない恐れが大きい。

 2011年に東日本大震災が起きた際、多くの企業は上流工程のサプライヤーに関する情報を十分に持たず、被害の全貌を把握するのに何週間も要する有り様だった。気づいたときには、生産キャパシティはすべて塞がっていた。主要なサプライヤーとの関係構築にも、前もって努めておこう。混乱が起きてからでは手遅れなのである。

 ●自社の重大な弱点を認識してリスク分散を図る

 サプライチェーンの多くは自律性を欠き、それが企業にとってのリスクになる。具体例として、自社の依存するサプライヤーが、世界市場で大きなシェアを占めながら、工場は1つしか持たないような場合が挙げられる。

 この種のリスクは東日本大震災によって露呈した。たとえば、自動車メーカーにとって不可欠な部品であるエアフローセンサーは、日立オートモティブシステムズが世界の供給の約60%を握っていた。自動車OEMメーカーの一部は、震災を引き金にした品薄を見越して、手持ちのエアフローセンサーを最も利益率の高い車種に割り当てざるを得なかった。

 新型コロナウイルス感染症の流行は、アップルや多くの自動車OEMメーカーが、中国からの調達に依存する実情を焙り出した。

 ●事業継続計画を策定する

 この種の計画には、重要分野における不確実性を具体的に明記し、輸送、コミュニケーション、供給、キャッシュフローといった分野の支援・代替プランを盛り込むべきである。サプライヤーや顧客にも、策定作業に加わってもらおう。

 ●従業員を常に念頭に置く

 従業員を対象とした支援プランも求められる。人材不足に陥った場合の対応策として、自動化のさらなる推進、リモートワークの実施など、臨機応変な人材確保策に言及する場合もあるだろう。