バイアスを克服する
こうした発見は、公平性、忠誠、倫理といった問題が生じたとき、組織の意思決定者にはデリケートな行動が求められることを示している。マネジャーたちは自分の評判を守るためなら、不公平で、不誠実で、非倫理的な選択をする可能性があるのだ。
とりわけそれが頻繁に起きるのは、倫理的に振る舞うことと、倫理的に見えるようとすることの間に、二律背反を感じたときであることもわかった。さらにやっかいなことに、似たような状況に対処するためのよくある戦略(経済的な利益相反の開示など)は、よくても効果がなく、悪ければ逆効果をもたらす。
では、善意のマネジャーが、こうした意思決定の落とし穴を克服するためにはどうしたらいいのか。私たちの研究では、ある介入方法が役立ちそうなことがわかった。それは、こうした判断を別の不偏不党の者に委託することだ。
たとえば、あるマネジャーがどの社員(そのうち一人は友人だ)にボーナスを与えるか判断しなければならないとき、別のマネジャー(どの社員とも友人ではない)に判断を任せるのだ。あるいは、分割不可能な賞与を与えなければならないとき、社員たち自身に誰がふさわしいか決定を委ねることもできるだろう。
バーチャルリアリティ企業のセカンドライフは、ボーナス分配ソフトウエアを開発するにあたり、社員がマネジャーの介入なしで分配方法を決められる戦略を取った。とりわけ、各社員が平等なボーナスを受け取ったうえで、それをさらに分割して、別の社員に匿名であげられるようにした。その結果、自分はいっさいボーナスを取らないようにすることもできる。
同社は、そのほうが最終的に公平な配分ができるだけでなく、社員の満足度も高まったとしている。これは私たちの研究でも明らかになった。
これに関連して、私たちは8つの実験で、自分と他人の間で報酬を分配する立場になった人が、その立場を放棄すると(つまり相手に決定権を譲ると)、相手はあなたにとって最も望ましい結果を与えることがわかった。これは、決定権を譲る行為が、その人の寛容性を示すと見なされるためで、決定権を譲った者は物理的な報酬だけでなく、公平で寛容な人物と見なされるという評判面での恩恵も得る。
こうした戦略は、非倫理的な行動を取らなくても、倫理的な人物だという評判を得る助けになるだろう。
HBR.org原文:Research: The Downsides of Trying to Appear Ethical, February 10, 2020.
■こちらの記事もおすすめします
部下に好かれるリーダーは、なぜ有能に見えるのか
社員が「自分らしく」働ける職場は不正が起きにくい
自制心の強さがもたらす6つの負の影響