ケーススタディ(2)
自分の価値をチェック済みの項目数ではなく、貢献度で測る

「やることリスト」でチェックマークのついていない項目があることから生じる罪悪感は、キャリアアップするにつれて増大したと、ケイトリン・ホルブルックは語る。

「チームの一員から重責を担うリーダーになったときにストレスがたまった」と話すケイトリンは、ボストンを拠点とするPR会社V2コミュニケーションズ(V2 Communications)のシニアバイスプレジデントである。「その後、母親になると、ストレスに対応するのがさらに困難になった」

 3人の子どもの母親であるケイトリンは、「やることリスト」にいくつかのタスクが長いこと残ったままであると気に病んでいたことを、鮮明に覚えている。「どうしたって、すべてを優先するわけにはいかない。緊急の課題が常に噴出していたし」と述べる。

「そのため、急ぎでない項目はいつまでもリストに残ってしまい、同僚に進捗を聞かれると、『まだ始めていない』とか『いま取り組んでいるところ』と答えざるをえなくて焦った」

 しかし、ケイトリンは何年かかけて自分のアプローチを変え、罪悪感を減らした。まずは自分にできること、できないことを明確に伝えることにした。彼女はその結果、解放感を味わうことができたという。

「自分の1日のスケジュールを同僚と共有した。たとえば、チーム内のミーティングには、午前9時半以前か午後4時半以降に電話でなら参加できると決めた。実のところ、これが理想的だった。なぜなら、優先事項に取り組む時間が日中により長く取れるから。私が物理的に参加しなければならないミーティングは、その合間に入れるようにした。ただ、顧客とのミーティングだけは先方の予定に合わせる」と語る。

 また、彼女は何もかも自力でやることを諦めた。「同僚を待たせているほうが、同僚の1人に手助けを頼むよりも害が大きいことを悟ったら、飛躍的に進歩できた」とケイトリンは話す。「彼らに負担をかけるのではと感じていた。しかしたいていの場合、新たなスキルを磨けるので、チームの中で経験の浅いメンバーが進んで引き受けてくれた」

 最後にケイトリンは、自分が予定した「やることリスト」が午前10時前には脇道に逸れてしまう日が多くても、それには正当な理由があるということを忘れないようにした。「より喫緊の用件が持ち上がるからだ」と彼女は語る。

「たとえば、顧客が想定外の問題を抱えている、私の対応が必要な事件が起きた、同僚が私の助言を求めている、あるいは私が何かをしなければならない事態が出てきた、といった具合だ」と説明する。

 現在のケイトリンは、自分の価値を「やることリスト」で終わらせた項目数ではなく、自分の組織や同僚、顧客に対する貢献度で測っている。自分の「やることリスト」にない事柄に巻き込まれるのは、「私が何らかの価値を提供できるからだ」と考えるようにしたのである。


HBR.org原文:Stop Feeling Guilty About Your To-Do List, March 09, 2020.


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