気候変動という現実
企業には、気候変動に対し、個々の努力だけでなく他社、政府、市民社会と協力しながら、至急対処することが求められている。
したがってビジネススクールにとっては、学生を気候問題に取り組めるよう教育することが、喫緊の課題である。現在のMBAのカリキュラムと専門分野の幅をさらに広げ、気候変動の科学的背景を教えるべきだ。投資家が、環境への関心を投資基準や正味現在価値の計算に織り込むのであれば、教授者と思想家はその方法を見出して教える義務がある。
しかし学校側は、学生により幅広い経営スキルを身につけさせる以外にも、やるべきことがある。未来のビジネスリーダーに対し、より大規模な社会的目標とシステム変革の実現に向けて、他者と協働する方法を教えることだ。これは、2つの主要な成功要因、つまり競争と協力のバランスをどう取るかを考えるということである。
ほとんどのビジネススクールでは依然として、競争こそが成功を左右する最大の要因とされている。マイケル・ポーターの有名な『競争の戦略』は、1980年の出版以降、ビジネス教育のバイブルとされてきた。同書は勝敗が分かれる環境で成功するための指南書だ。
もちろん、これとは方向を異にする動きもある。ポーター自身のその後の著作『競争優位の戦略』、および彼が提唱する「共通価値」という概念は、協業の可能性を認めている。アダム・ブランデンバーガーとバリー・ネイルバフの1996年の名著『ゲーム理論で勝つ経営』なども同様だ。
それでもなお、ビジネス教育はいまだに、協力よりも競争に重きを置き、公共の利益よりも自社だけが成功する秘訣を教えている、といっても間違いではないだろう。
こうしたやり方を、長く続けることはできない。2020年における諸問題は、システム全体を変えることが求められる類のものだ。
たとえば、食料、水、エネルギー消費、サプライチェーンは、すべて気候問題の原因となっている。学生にシステムレベルの変革を主導してほしいならば、複雑系のメカニズムはどうなっているのか、どれほど多くの異なる要因が絡み合って、解決が非常に困難な問題を生じさせるのかを理解してもらう必要がある。
これは、短いケーススタディやパワーポイントのプレゼンでは不可能だ。学生に求められるのは、自分の職業的役割に限定されない広い視野を持ち、解決に数世代を要するつもりで考えることだ。そして他分野で働く人のニーズを理解し、交渉、仲介、協業の道を探る必要がある。
上記のスキルはどれも、ほとんどのビジネススクールのカリキュラムで重要科目とされていないが、されるべきである。