(1)いつから社員を再び出社させるべきか

 私たちが米国の854社を対象に4月前半に行った調査によると、社員の過半数がリモート勤務可能だという企業は、全体の42%に上っている。この割合は、新型コロナウイルスの感染拡大前は14%にすぎなかった。

 経営者はいま、リモート勤務中の社員の多くをいつ、どのように職場に復帰させるべきかを知りたいだろう。

 世界保健機関(WHO)の勧告によれば、市中感染の減少が続き、陽性率が下落し続け、新たな感染爆発を察知するのに十分な検査体制が整い、患者が急増した場合に対応できるだけの地域医療体制が確保できてはじめて、非エッセンシャルワーカーの出社を再開すべきだという。

 企業は、地域の実情に応じて、地域ごとに異なるスケジュールで職場の再開を進めるつもりでいるべきだ。リモート勤務では業務を長期にわたり続けられない職場や、業務に対する社会的ニーズが高い職場、大掛かりな模様替えをしなくても人と人との距離を確保できる職場から先に再開すればよいだろう。

(2)誰を職場に復帰させるべきか

 全員の出社を再開すべきではない。全員を同時に職場に復帰させることも避けるべきだ。

 理想的なのは、社員を段階的に、少しずつ職場に復帰させることだ。そうすれば、職場で人が密集しにくく、人と人との距離を確保しやすい。それに、まず一部の社員だけを出社させることにより、職場の物理的環境や業務フローのストレステストができる。そうすれば、今後もっと多くの社員が出社を再開したときに起きる混乱を最小限に抑えられる。

 新型コロナウイルスに感染した場合のリスクがとりわけ高い人たち――60歳より高齢の人や、肥満の人、慢性の呼吸器疾患や心臓疾患がある人、糖尿病や腎臓病がある人など――は、市中感染がきわめて少なくなるまで、できるだけリモート勤務を続けたほうがよいだろう。

 また、子育て中で託児サービスを利用できない人や、通勤により感染リスクが大幅に高まるような人も、できればリモート勤務を続けることが望ましい。

 差別的な状況を生み出さないためには、まだ出社したくないと感じる社員がそのような希望を自由に述べられるようにし、その際に理由を問わないようにしてもよい。つまり、高齢、持病の有無、通勤方法、育児といった理由を述べなくても、リモート勤務を選択できるようにするのだ。