●対人距離へのニーズの高まり

 第3の要因は、人と人が密集する状況を消費者が好まなくなっていることに、投資家や経営者が気づき始めていることだ。

 そうした認識を受けて、多くの業界は、消費者への価値提案、ビジネスモデル、価値評価基準の見直しを急がなくてはならない。たとえば、規模の大きさは、競争力の大きな源泉と見なされていたが、次第に大きなお荷物になり始めている。

 フードビジネスの世界では、ファストフード店だけでなく、スーパーマーケットやレストランでもドライブスルー方式が広まる可能性が高い。ただし、ドライブスルー方式を導入するには、設備投資が必要となる。デリバリーへの需要も高まるだろう。スーパーマーケットやレストランは、そうしたニーズに対応しつつ、利益をあげる方法を見出さなくてはならない。

 目端の利くレストランの中には、ミニ食品店を併設し、自分の店と関連のある食材(たとえばピザとチーズなど)を販売し始めるケースもあるだろう。コロナ禍の影響により、消費者が外出の機会や立ち回り先を減らそうとする結果、そうしたビジネスへのニーズが高まるかもしれない。

 フードビジネス以外の場面でも、消費者は、人と人が密集しないことを望むようになっている。仕事に関しては、オープンスペースのオフィスや、混雑したエレベーター、高層オフィスビル、満員電車が避けられるようになるだろう。その結果、大都市での暮らしを考え直す人が増えるかもしれない。

 ソフトバンクは、投資先でシェアオフィスを手掛けるウィーワーク関連で66億ドルの損失を計上したが、損失はさらに拡大する可能性が高い。見ず知らずの人の隣で仕事をする場を提供するというウィーワークの価値提案は、コロナ禍を機にたちまち敬遠されるものになった。

 大学教育のビジネスモデルは、大勢の人が密集する教室と学生寮を基盤にしている。いま多くの大学が経営破綻のリスクにさらされているのは、そのためだ。航空業界は近年、有償座席利用率を高めることによって利益を増やしてきた(有償座席利用率は、2005年には75%だったが、最近は85%に達していた)。しかし、コロナ禍により、この戦略も崩壊した。

 また、資産活用やコストリーダーシップに始まり、規模の経済にいたるまで、経営戦略に関する考え方はことごとく、コロナ後の時代に通用するかどうかを厳しく見極められることになる。

 今後、在宅勤務が劇的に増加し、家族の人数が減少し続け、密集への人々の恐怖心が和らがないままだとすれば、古い経営戦略では利益と成長を実現できなくなる。

 投資家と経営者が肝に銘じておくべきなのは、その場しのぎの解決策に終始すれば、痛みが長引くだけだということだ。時代遅れの常識に基づいた古い戦略とビジネスモデルにしがみつくのではなく、リモート勤務の拡大と、単身世帯の増加、「他人は危険」という発想の広がりを前提とした新しいカテゴリーをつくり出したほうが、好ましい結果になるのである。

 裁縫と同じ道を歩む可能性があるのは、料理だけではないのかもしれない。


HBR.org原文:3 Behavioral Trends That Will Reshape Our Post-Covid World, May 26, 2020.


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