●感情と認知力における疲れ

 新型コロナウイルス感染症は、私たちの感情と認知力に「重荷」をもたらし、通常なら仕事に注ぐことができるキャパシティを低下させている。このため、多くの人(集中力を削ぐものが極めて少ない環境にいる人でさえ)は感情面と認知力の面で、これまでにない疲労を経験している。

 たいていの人は、表面的には「元気です」と言うが、多かれ少なかれ、自分のウェルビーイングを心配し、ハイリスクと見なされる家族の健康を心配し、仕事が十分にできないことや、子どもの勉強を十分に助けられないことに罪悪感を覚えている。

 なかには、新型コロナウイルス感染症の影響を身をもって感じている人もいる。筆者のあるクライアントは、高齢の隣人が新型コロナウイルス感染症により死去したことを、自分の子どもにどう知らせるべきか考えあぐねていた。また、多くの州が経済活動を再開しつつあり、企業が出社再開を検討するなか、ビジネスパーソンは自分の安全について新たな心配や懸念を抱いている。

 心配や不安や悲しみや罪悪感といった感情は、本人が自覚しているか否かにかかわらず、基本システム(OS)のバックグラウンドで作動し続けるサブルーチンのようなもので、私たちの限られた容量のハードドライブを食い潰す。

 社会心理学者ロイ・バウマイスターの研究によると、感情を押し殺したり、偽ったりすること(人間は仕事をやり遂げるためにそうすることがある)は、代償を伴う。限られた意思の力をむしばみ、消耗させるのだ。

 ●思いやり疲れ

 ビジネスパーソンを消耗させるもう一つの現象は、思いやり疲れだ。

 リーダーが部下に共感し、個々の環境を理解して、よりよいサポートを提供しようとすると、無意識のうちに体力と精神力を消耗することになる。経営コンサルティング会社に勤めるトリシャは、自分のチームの感情面のウェルビーイングに気を配ろうとするあまり、自分でも驚くほど疲れ果ててしまったと言う。

 筆者自身、エグゼクティブコーチとして、そして「助ける」ことを仕事にしている人間として、多くのリーダーにサポートを申し出た結果、午後3時には疲労困憊してしまう日がたくさんある。十分な睡眠をとっていても、だ。同業者の仲間も、同じような経験をしている。

 ●身体的な疲れ

 人間の感情が、身体的なウェルビーイングに直接的な影響を与えることは、多くの研究で報告されている。複数の研究によると、体調不良で医者にかかった人の80%が、社会的・感情的問題を抱えているという。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大以来、多くの人が生活の激変を経験してきた結果、鬱や不安を訴える人が増えた。集中力や記憶力の低下、さらには睡眠不足に陥り、身体的な疲れを感じるか、慢性的な倦怠感に見舞われ、ますます生産性が低下する。