●勤務評価を行う目的を再確認する

 まず、そもそも何のために勤務評価を行うのかを考えよう。

 コロナ禍が長引く中で、成績の悪い部下を辞めさせようとか、誰を昇給させるかを決めようとし思っているわけでは必ずしもないだろう。この時期に勤務評価を行うのは、自社の組織文化を強化し、組織の価値観を補強することが目的のはずだ。

「このような状況で社員にどのように接するかによって、組織文化が強化されるか崩壊するかが決まる」と、タヴィスは言う。勤務評価を通じて何を成し遂げたいかをよく考えよう。

 モーテンセンによれば、「勤務評価は組織文化の強力な土台であり、しかも組織文化の産物でもある」。だから、勤務評価を賢く活用すべきだという。

 会社が追求すべき短期的・長期的な目標について、上司や同僚と話し合うとよい。そして、勤務評価を通じて部下にその目標を伝えるためにどうすればよいかを一緒に考えるのだ。

「このような時期のリーダーの言葉と行動は、ずっとメンバーの記憶に残る」と、モーテンセンは言う。いまこそ、マネジャーとしての真価を見せよう。「メンバーを大切に」することが重要だ。

 また、あなたの最大の目的は変わらないということも忘れてはならない。「部下の強さを最大限引き出せるよう支援することが目的である点は、いまも変わっていない」

 ●評価基準を考える

 自分の頭の中で評価基準をはっきりさせることも重要だと、モーテンセンは言う。コロナ禍以前の売り上げを評価基準にするのか。それとも、現在の売上げを見るのか。この点を判断するうえでは、「大切にすべき原則に照らして何が一番重要なのかを考えるべきだ」という。

「勤務評価とは、目標の達成度を明らかにするためのもの」だと、タヴィスは述べている。しかし、ほとんどの企業では、コロナ禍以前に設定された目標を「そのまま維持することはできない」。言ってみれば「ゴールポストが移動」して、環境も大きく変わったからだ。

 コロナ禍以前の目標に照らして勤務評価を行うのは公正でないので、一人ひとりがどれくらい成長し、学習したかを評価基準にすればよいと、タヴィスは提案する。

 厳しい時期における部下の「共感の精神、レジリエンス(再起力)、適応力」に着目せず、「業務の達成度にばかり目を向けるとすれば、不幸と言うほかない」という。「このような危機の時期には、チームワークとコラボレーションがものを言う」ので、そのような行動を評価して、それに報いるべきだというのだ。

 ●思いやりの精神を発揮する

 次に、置かれている状況が人によって大きく異なることを、よく認識すべきだ。部下がリモート勤務で仕事をしていることを考えれば、「もう少し柔軟に、もう少し気遣いの精神を持って、もう少し寛容に」接するべきだと、モーテンセンは言う。

 自宅で顧客と電話で話しながら、まだ幼いわが子の相手をしたり、子どもに算数の勉強を教えたりしている人もいるだろう。仕事のプロジェクトを監督しつつ、高齢の家族の世話をしている人もいるかもしれない。あるいは、孤独に苛まれながら働いている人もいるに違いない。

「それぞれの部下がどれくらい厳しい環境に置かれているのか、正確には知りようがない」のだ。

 マネジャーは「部下の家庭環境を無視して、成果だけを評価するべきではない」。思いやりの精神を発揮することが大切だ。「コロナ禍が精神にどのような打撃を与えるかは人それぞれだ」と、モーテンセンは言う。「一人ひとりにもう少し自由を認めよう」