●レーティング評価の中止を検討する

 一人ひとりに自由を認めるという精神に基づいて、一時的に「レーティング評価を中止」するよう、タヴィスは提案する。現在の状況で部下を採点することは「きわめて難しい。物理的な理由で100%の力を発揮できない部下も多い」からだ。

 教育の現場では、今学期は成績を数段階のレーティング評価で示すことをやめにして、単に合格・不合格だけ通知するように切り替えるケースが多いと、タヴィスは指摘する。

 職場でもレーティング評価の代わりに、「柔軟性のある評価方法を導入」し、「多くの人が直面している苦境に目配り」をして、「文章の形で評価を伝える」ことをもっと増やせばよいと、タヴィスは言う。どの点がうまくできていて、どの点にまだ改善の余地があるかについて、具体的で有益な情報を提供すべきだというのだ。

 ●多様なデータを集める

 リモート勤務時の勤務評価でとりわけ難しい点の一つは、部下と直接会えないため、手に入るデータの量が通常より少なくなることだと、モーテンセンは指摘する。

 その結果として、「好ましい印象にせよ、悪い印象にせよ、すでに抱いている先入観が増幅されかねない」。つまり、エース的存在の部下は「素晴らしい成果を挙げる」ものと決めつけ、苦戦していた部下は「またドジを踏む」に違いないという色眼鏡で見てしまうのだ。

 この問題を克服するためには、「そうした先入観の存在を認識すること」と、「ほかの情報源からの情報も得るようにすること」が有効だと、モーテンセンは言う。

 具体的には、部下自身の自己評価を尋ねたり、ほかのメンバーの意見を聞いたりすればよい。タヴィスは、ほかの人たちがどう思っているのか尋ねることを勧める。

「その人はどのくらい積極的にコミュニケーションを取っているか。顧客や同僚との関係は良好か。誰かの力になろうと努めているか。こうした(前向きな)問いを中心に据えるとよい」

 ●適切なトーンで接する

 リモート勤務が一般的になり、いわゆる「ズーム疲れ」を経験する人がしばしば見られるようになったことは事実だが、「ズーム」などのビデオ会議システムを用いたコミュニケーションは、勤務評価について話すうえで「非常に重要」だと、タヴィスは述べている。「より私的で人間味のある会話ができる」からだ。

 それに、「リビングルームで働いているにせよ、キッチンやクロゼットで働いているにせよ、部下の置かれている状況がよくわかる」という利点もある。

 寛大な姿勢で、温かみのある態度で話すようにしよう。自分と相手の双方のボディランゲージにも注意を払うこと。

 同じ空間にいないので、「場の雰囲気が意思疎通の助けになりづらく、誤解が生じやすい」と、モーテンセンは釘を刺す。「(ビデオ会議でコンピュータの画面上にあらわれる)部下の顔は、二次元のちっぽけなものでしかない」ので、言葉で表現されない状況を「判断することが難しい」のだ。

 自分の発言で部下の心を傷つけてしまったのか。それとも、部下のビデオ会議システムの画像がフリーズしているだけなのか。そうした判断が困難になる場合がしばしばある。

 そこで、「はっきりと言葉で表現する必要性がいっそう大きくなる」と、モーテンセンは言う。注意深く相手の話を聞き、双方向の言葉のやり取りを増やすよう心掛けるべきだ。「行き違いがないようにするために、しっかり時間を割かなくてはならない」のである。