OKR型マネジメントにうまく移行するには

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 人材・組織 プラクティス 日本統括
東京外国語大学外国語学部卒業後、自動車メーカーに入社し、人事部にて、海外人材採用・育成やグローバル幹部育成等、グローバル事業展開を人事・組織面から支える業務に従事。 アクセンチュアに中途入社し、以降、幅広い業界において、グローバル化・デジタル化に向けた企業変革支援や人材・組織戦略、M&A支援などの戦略コンサルティングに従事。
植野 OKR型マネジメントを導入して定着させていくには、関連する法規制に抵触しないことは言うまでもありませんが、まずはトップマネジメントが全社ビジネスの抜本的改革であると位置付ける必要があります。
その理由は、OKR型に移行するには、以下のような問いに答え、業務を徹底した成果追求志向に再定義する必要があるからです。
- 企業として達成しなければいけない成果を、①行動、②戦略的成果、③財務的成果のレイヤーのどこに設定するか
- 成果の達成レベルを、①自社前年比、②競合と同等、③競合を圧倒的にしのぐというレイヤーのどこに設定するか
- それらを達成する時間軸をどう設定するか
- この達成すべき成果をトップダウンでどのように組み立てて、全社として抜け漏れがなく、かつ有機的に機能するようにするか?
これらの問いに答えることは、人事部の仕事ではなく、経営者の仕事であるのは一目瞭然かと思います。また、上記に答える上で、トップマネジメントとしての「収益を飛躍的に上げる」というアンビションがあるかどうかも重要です。
最近クライアント企業から問い合わせが多い、ジョブディスクリプションの定義についても同じことがいえます。OKR型マネジメントにおける成果定義と対となるのが、役割・職務の定義、すなわちジョブディスクリプションの設定です。これはいわば、前述の成果を得るために、どのような組織・機能配置で臨むか、という問いになります。この進め方としてよくある陥りがちな間違いは、ボトムアップで今やっている仕事をそのまま文章化してジョブリストを作ってしまうことです。本来は、トップマネジメントが成し遂げるべき成果を見据え、トップダウンで行うべきことです。このニューノーマルの環境下において企業全体がどうあるべきかを設計し直す過程で、組織として必要な業務・機能を可視化し、ツリー構造で社長→部長→課長→社員の役割・ミッションがつながるように整合性を持たせることが大切です。
また、成果定義、ジョブディスクリプション定義を行う際に、もう一点気を付けたいこととしては、既存の人材の力量を前提に定義してしまうことです。前述の「経営のアンビション」に基づく成果を達成するためには、必要な人材を新たに獲得する、既存の人材をリスキルする、ということも前提に置いて進めることも重要です。
山形 企業全体の業務・機能の再配置を検討する際には、OKR型マネジメントへの移行のみならず、その根本的な目的である全社の生産性向上を実現するために、成果追求業務と効率追求業務の分化と効率追求業務のシェアードサービスセンターへの集約を進めるべきです。成果追求業務とは一定のリソースで最大のアウトカムを実現することをミッションとした業務であり、効率追求業務とは一定のアウトプットを最小のリソースで実現することをミッションとした業務です。成果追求業務のパフォーマンスを可視化することは、徹底した再定義から取り組む必要があるためトップダウンで進めるべき大きな活動となります。
一方で、効率追求業務は、各部署・従業員に分散している状態では、その効率性の可視化は測るすべも尺度もなく非常に困難ですが、前述のアクセンチュアBPOセンター内で既に実現されている通り、集約してシステム化を図ればパフォーマンスの可視化が可能です。
このように、全社の効率追求業務はシェアードサービスセンターに集約し、各部署は成果追求業務に純化させた上で、それぞれにおいてOKR型マネジメントに移行するアプローチが有効だと考えます。