働き方のニューノーマルに向けて経営者が考えるべき論点

山形昌裕
アクセンチュア オペレーションズコンサルティング本部 ソリューションデザイングループ 日本統括
東京大学工学部卒業後、総合商社を経て2003年にアクセンチュアに参画。15年以上にわたり、幅広い業界においてビジネス改革を推進。特にクライアント企業のビジネス構造・組織構造を変えるトランスフォーメーションプロジェクトの実績多数。

植野 ポストコロナ時代には「目的を持って働きたい」「フェアに評価してほしい」という価値観を持った働き手がメインになっていくでしょう。そのため、ジョブディスクリプションに基づいた働き方に転換できない企業は弱体化するリスクが極めて高くなる一方、逆に転換に成功した企業は男女の区別なく、優秀なタレントを大量に獲得できる可能性があります。今こそWFH(Work From Home)をベースとしたOKR型マネジメントへの転換を図るべきです。

堀江 これまでに述べてきた通り、新しい働き方への移行は単なるWFHの環境整備ではなく、また、ジョブ制への移行というような人事改革レベルのものでもありません。これまでの働き方を形成してきた前提・根拠・秩序の正当性が大きく揺らぐ中で、自社の競争力を一気呵成に高める戦略的な機会であると認識することが必要だと思います。

 経営トップの方々には以下の論点について、改めて再考することをお勧めしたいと思います。

  • これまでの働き方の課題を定量的、定性的に把握しているか
  • それらの課題に対して、新しい働き方がもたらす潜在的な価値を認識しているか
  • 新しい働き方への移行にどれだけの投資をして、どれだけの成果を期待すべきかが明確になっているか
  • そうした成果を出す上で、業務の機械的な可視化に陥らず、自社の根源的な強みや、それを育む善きカルチャー、風土が強化されるような工夫はできているか
  • 移行のための施策、ロードマップ、時間軸は明確になっているか
  • それらの過程の中でトップ自らの陣頭指揮が必要な部分が明確になっているか

 これらの論点をあらかじめ十分に検証したとしても、実際に始めてみるとうまく機能しないということもよくあります。計画の策定に際しては最初から完璧を求めず、トライ&エラーで実践しながら改善していく姿勢が望ましいと考えます。うまくいっているチームとそうでないチームが出てきて、それが業務の進捗状況にも表れてきますが、その違いによって良い方法を学んでいくといった心構えが必要でしょう。OKR型マネジメントに転換するうえではそうした期間も考慮に入れる必要があります。

 マネジメントの方々には、より多くの人材が活躍する社会の実現に向けても、積極的にこの新しいモデルへの移行にチャレンジしていただきたいです。

前編はこちら
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/6951