レストラン業界がこの危機を乗り越えるために、どのような支援策が取られるべきだと思いますか。
コロナ禍で、私たちも休業しなければなりませんでした。非常に難しい判断でした。2ヵ月ほど前、同業者2人とドナルド・トランプ大統領と電話で話しました。そのとき、休業補償保険を払わない保険会社があることを訴えました。業界全体として、政府の支援を得たいと思っています。レストラン業界のための需要喚起策が必要なことも、大統領に訴えました。昔のように、仕事上の会食を損金算入できるようにすることなどです。
これは私の店だけの問題ではありません。たとえば、スパーゴには150人の従業員がいますが、食材はどこから調達するのでしょうか? 農家です。魚は? 漁師です。どうやって入手するのか? 誰かが配達してくれます。レストランに客が入ることで、生産者や運送業者に波及効果が生まれます。
レストランビジネスは直接および間接にとても多くの人を雇っています。需要喚起策は、レストランとケータリング業界が復活する大きなカギになるでしょう。
営業再開後はどのようになると思いますか。何が課題となるでしょう。
短期的には、顧客にとって大きな変化となると思います。ウェイターやウェイトレスはマスクを着用することになるでしょう。また、顧客がドアに触らなくてもいいように、ドアマンを置くことになるでしょう。バレーパーキングはまだ続くと思いますが、誰かに任せるのではなく、自分で駐車したいという顧客もいるかもしれません。まだわかりませんが。
願わくは、冬までにワクチンが完成して、皆がもっと安心できるようになればいいのですが。やはり最大の懸念は、従業員と顧客の安全をいかに守るかです。
レストラン再開でもう一つ難しいのは、ただちに職場復帰させる人の数と、誰を復帰させるかの判断です。これは非常に辛い判断です。従業員と顧客の安全をいかに守るかという問題に戻ってきますが、席数を半分に減らすのにスタッフを100%復帰させるわけにはいきません。そんなことをすれば、瞬く間に会社が潰れてしまいます。
そのため、しばらくは多くが引き続き失業または一時帰休状態でしょう。最も辛いのは、誰に復帰してもらい、誰に一時帰休を続けてもらうかの判断です。多くは、ビジネスが完全に復活したときまで待たなくてはならないと思います。そんなときが来たら、の話ですが。彼らにとっては、いつまで仕事がない状態が続くのか。とても難しい問題です。
ワクチンが流通し、人々が安心して外食できるようになったら、ようやくニュー・ノーマル(新たな常態)がやってくると思います。そのときはまた、人と人が物理的に近づくことができるのでしょうか。レストラン側は、顧客の要望に合わせた対応することになるでしょう。とにかく、安心して外食ができるようになってもらわなくてはいけませんから。
短期的には、従業員と顧客の安全を守るために最善を尽くします。長期的な課題は、どうすれば昔と限りなく近い状態までビジネスを戻せるか、ですね。
HBR.org原文:Wolfgang Puck on Leading His Restaurants Through the Pandemic, June 24, 2020.
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