(5)メンバーがみずからの好む行動パターンを理解するよう促す

 この作業はリーダー自身も行うべきだ。ストレスにさらされているとき、人は勝手知ったる「快適ゾーン」にひきこもる傾向がある。そこで、自分がどのような行動を取りやすいのかを知っておくことが重要だ。

 プレッシャーが高まったとき、あなたは同僚に電話して、励まし合ったり、アイデアを出し合ったりするタイプだろうか。それとも、一人で行動することを好むタイプだろうか。

 この検討の一環として、前の年に回答した自己分析の結果を再確認しよう。あわせて、周囲の人たちが自分のことをどう見ているのかも尋ねるとよい。たとえば、ストレスにさらされたときに、あなたがどのような行動を取っているかを、同僚たちに尋ねてみよう。

 人々がみずからの典型的な行動パターンについてよく理解できれば、自分の行動パターンを生かしてグループ全体の効率を高めるための手掛かりになるかもしれない。

(6)自分の強みを生かす

 自分の自然な行動パターンを変えることは、危機に見舞われてストレスにさらされているときは不可能に等しい。それを目指すよりも、自分のスタイルを意識的に活用して、コラボレーションを促進することを目指したほうがよい。

 あなたがチームで行動することを好むタイプだとすれば、その熱意を活かして、チーム内の同志意識を育むよう努めてはどうか。たとえば、チームが目標を達成したときは、それがたとえ小さな成果だったとしても、派手に祝福しよう。

 メンバーのエンゲージメントや士気を高めることは、数値で評価できない漠然とした行動などではない。それは、生産性をはじめ、数値評価可能な成果に結びつく行動だ。

 4大会計事務所の一つでシニアマネジャーを務めているジリアンの場合がそうだった。ジリアンは、メンバーの自信を高め、メンバーが互いの能力を信頼し合える状況をつくり出すための取り組みを意識的に行っている。具体的には、メンバーの専門知識やスキルに光を当てたり、個々のメンバーの知識がチームとしての目標達成に役立ったことを強調したり、チームとしての成功体験をみんなで共有したりしている。

 あなたがジリアンのようにチーム志向が強い場合は、チーム志向の行動が過剰にならないよう注意しよう。また、一度にたくさんのチームに加わりすぎないことも重要だ。しっかり厳選して、とりわけ重要性の高いプロジェクトだけに関わろう。

 一方、もしあなたが一人で仕事をするのを好むタイプの場合は、物事の実行を推し進める役割を担うことでチームの活動に貢献すればよい。あるソフトウェア会社で財務責任者を務めるサミーアは、社内で「チームワークの総元締め」とも呼ばれている。ある状況で、チームで行動したほうがよいのか、それとも個人で行動したほうがよいのかを真っ先に指摘する人物だからだ。

 サミーアが個人での行動を好む傾向を持っているおかげで、この会社のチームはうまくバランスが取れている。普通であれば、コンセンサスづくりに苦労したり、グループでの議論が非生産的な袋小路にはまり込んだりしかねないときにも、このチームは課題に集中できているのだ。

 リーダーが理解しておくべきなのは、特定のタイプの人間だけではコラボレーションを促進できないということだ。さまざまな行動パターンの持ち主が必要だ。リーダーはコーチングを通じて、一人ひとりのメンバーが自分の役割を果たすよう促すことにより、誰もが担当業務の枠を超えて一緒に仕事をするようにしなくてはならない。

(7)コラボレーションを実践したリーダーとチームを称賛する

 リーダーはしばしば、口ではコラボレーションの重要性を説いていながら、セールス目標を達成したり、長時間残業をしたりした個人を称賛して、みずからの言葉の説得力をそこなってしまう。

 リーダーは個人の努力を称えるだけでなく、その人物が目覚ましい活躍をするのを助けたチームにも光を当てよう。チームが具体的にどのような支援を行い、メンバー全員が目標の達成にどのように貢献したかをしっかり指摘すべきだ。

 メンバーが在宅勤務で働いているときは特に、リーダーがサポート役の貢献を強調することの意義が大きい。メンバーが生産的な仕事をできるのは、家族のおかげだと、忘れずに念押ししよう。

 いずれかの時点で、報酬システムやインセンティブ設計、社員の採用方法などの面で組織のあり方を再検討し、必要な修正を加えなくてはならない。現在の仕組みは、社内のコラボレーションを促進できているだろうか。コラボレーションを阻害してはいないだろうか。こうしたことをいつかは問い直さなくてはならない。

 しかし、言うまでもなく、そうした再検討作業を行うのは、危機が過ぎ去るまで待たなくてはならないだろう。それまでの間は、本稿で紹介した7つの戦略を試してみよう。担当業務の垣根を越えたコラボレーションを促すことができれば、あなたの組織は現在の難局を乗り切り、さらには危機後に繁栄できる可能性が高い。


HBR.org原文:7 Strategies for Promoting Collaboration in a Crisis, July 08, 2020.


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