3月にリモートワークへの移行を決める前、ツイッターはリモートワークに関してどのくらいの準備をしていたのですか。

 リモートワークの準備は、2年ほど前から始めていました。けれども、世界規模で感染症が流行する事態は予想していませんでした。私たちが考えていたのは、勤務形態の柔軟性を高めようという程度のことでした。在宅勤務を最近の流行としか考えていなかったのです。

 社員は会社に対してさまざまなことを要求します。使命感を持った会社で働きたい。社員の待遇がよい会社で働きたい。そして、柔軟な働き方ができる職場で働きたいというのも、働き手が望むことの一つです。柔軟な働き方ができれば、自分の望むキャリアを追求するために、いまほど多くの犠牲を払わなくても済むからです。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて自社のやり方を変更した点の中で、最も大きかったものは何でしたか。

 まず、コロナ禍以前、私たちの採用プロセスでは、オフィスで非常に多くのことを行っていました。採用候補者を遠方からオフィスに呼び寄せて、何度も面接を重ねていたのです。理由はいろいろありますが、ツイッターは人間を重視する会社で、オフィスは人と人が触れ合う場だというのも理由の一つでした。

 そんなツイッターがすべてバーチャルで採用活動を行うように転換するためには、多くの苦労を払う必要がありました。採用を行う部署のマネジャーと採用チームの準備体制を整えなくてはならなかったのです。

 それ以上に注意を払ったのは、採用候補者たちが好ましい経験をできるようにすることでした。オフィスの動画を共有し、実際にオフィスを訪ねた場合と同様の経験ができるように配慮したのです。そのために、記念品を配り、オンライン上で挨拶をし、必要な場合はテクノロジー面のサポートも行い、気配りされていると感じられるようにしました。

 もう一つ大きく変わったのは、新入社員の受け入れプロセスです。以前は、新たに採用した人たちをサンフランシスコの本社に招いて、1週間かけてツイッターのことを学んでもらっていました。私たちの企業文化、仕事のやり方、ツイープであること、つまりツイッターの一員であることの意味を学ばせていたのです。

 実は2月末に、こうした研修のためにサンフランシスコへ出発する寸前の人たちにストップをかけました。その時、私たちはただちに問題の解決策を用意しました。リモート形式で質の高い新入社員研修を行えるようにしたのです。

 ツイッターの企業文化では、オフィスでの経験が非常に重要な位置を占めていたとのことですが、リモートワークへの移行は企業文化にどのような影響を及ぼしましたか。その変化に伴って、失われたもの、そして得られたものはありますか。

 うまくいったことの例を一つ紹介しましょう。私たちは月に1回、「#ワンチーム」と銘打った全社会合を行ってきました。これまでは、サンフランシスコの本社やその他のオフィスでこの会合を開催し、その様子をほかのオフィスに中継していました。これを全面的にバーチャルで行うことになった時、私たちは強い不安を感じていました。

 いざふたを開けてみれば、すべてバーチャルで行う「#ワンチーム」会合では、以前のやり方に比べて、社員の参加の度合いが大幅に強まりました。目下の危機が終わっても、元の方法に戻すことはないでしょう。

 バーチャルな「#ワンチーム」会合を行う間、(コミュニケーションツールの)スラックを活用して、社員がリアルタイムでコメントしたり、質問したりできるようにしています。この工夫により、プレゼンを行う人たちの説明責任と透明性が高まりました。

 それに、この方式の場合、全員がリモート参加になるので、すべての人がまったく同じ経験をすることになります。社員は、以前のやり方よりもじかに参加している感覚を味わえるし、プレゼンを行う人と同じ場にいる人と別の場にいる人の間の格差を感じることもなくなります。

 このような新しいやり方の一部は、今後もずっと残るでしょう。たとえば、私たちは、すべての会議で、つまりどんなに小さなミーティングでも、オフィスに出社している人も含めて全員がビデオ会議方式で参加してもらうことを検討しています。

 リモートワークの難しい点は何ですか?

 燃え尽きのリスクが高いことです。私たちは、社員を対象に数度にわたって調査を行い、子育て中の社員を特に対象にした調査も1回実施しました。その結果、わかってきたのは、社員が仕事の時間と私生活の時間の線引きに苦労しているという点でした。そのような問題を述べる人がきわめて多かったのです。

 そこで、私たちはこの問題についてモニタリングを続けてきました。すると、会議の負担が膨れ上がっている実態が見えてきました。以前なら廊下で手短に立ち話するだけで済んだ議題のために、いまは30分間のビデオ会議を行うようになっているのです。こうした会議に参加することの負担が、あまりに大きくなっています。

 この状況を解消するために、会議に関するガイドラインを見直しました。会議を主催する場合は、具体的な議題がなくてはならないものとしたのです。電話で会議に参加することも推奨しています。

 また、チームごとに話し合って、それぞれの社員が会社からの連絡に応じる時間帯を限定するよう促しました。これにより、常に連絡が取れる状態でいなくてはならないというプレッシャーがだいぶ和らいだようです。