営業プロセスを再考する

 パンデミック前であっても、買い手はデジタルに精通しているという点で、B2Bの営業組織より一歩先を行っていた。買い手の期待は個人の日常生活の中で、アマゾン・ドットコムやネットフリックスなどでのオンライン購入経験によって形づくられてきた。

 B2Bの営業組織においてデジタル化の進展が遅いのは、3つの要因が考えられる。

 1つ目に、デジタルやバーチャルでの営業強化は、フィールドセールスの担当者から顧客あるいは業務の一部を奪うことにつながる点だ。当然ながら、現場の人間は抵抗して、営業プロセスのあらゆるステップで、自分の権限を守ろうとする。

 2つ目は、営業部門のリーダーが、顧客関係が混乱するリスクを懸念して、抑制的になる点だ。そして3つ目として、テクノロジーの硬直性とB2B営業の流動性が衝突するため、デジタルシステム導入に遅れが生じ、導入のインパクトが疑問視されてきたことが挙げられる。

 マイクロソフトのCEO、サティア・ナデラは2020年4月、パンデミックが生活と仕事のあらゆる面に影響を及ぼしたことで、「2カ月で2年分のデジタルトランスフォーメーションが起きた」と述べている。

 実際、変化に伴う技術的な障壁は急速に下がっている。営業担当者と顧客も、変化の準備はできている。あるフィールドセールスの担当者は、新しいバーチャル営業の世界について、「顧客は馴染んできています」と、物憂げに言っていた。

 前に進むためには、フィールドセールスの担当者が営業プロセスの中で、これまで通り重要かつ中心的な役割を果たす場面と、彼らの役割が縮小される場面を理解することが重要になる。

 カギとなるのは、購入の煩雑さや買い手の不確実性に合わせて、対面営業のチャネルを調整することだ。営業組織は、以下のようにシンプルな状況では、対面営業を取りやめたり、訪問回数を減らしたりできるだろう。

・簡潔な購入手順(情報の共有、注文方法など)。
・バーチャルなつながりに慣れている顧客。
・決定権を持つ者が何を買うか、すでにわかっている(特に、繰り返し購入する場合)。

 あるいは以下のように複雑な状況では、基本的に対面販売に戻るだろう。

・ニーズが漠然としている、あるいは解決策がわからない顧客。
・コラボレーションや創造性を必要とする状況。
・意思決定に影響を及ぼす要素が多い買い手。