インセンティブを見直す

 新たな営業プロセスを導入して何が成功要因かを再考すると、営業の役割の変化を補強するために、インセンティブを見直す必要が生じる場合がある。さらに、インセンティブ制度の再設計は、パンデミック前に生じていた未解決の問題にも対処できる。たとえば、次のような変更を検討しよう。

 ●給与と価値をマッチングさせる

 先日、ある投資信託の経営幹部が「フィールドセールスの担当者に比べて収入が3分の1にもかかわらず、インサイドセールスの担当者のほうがよい仕事をしている」と語っていた。

 フィールドセールスからインサイドセールスへ、さらにはデジタルへチャネルへと移行する中、それぞれの役割の給与水準を、実際の業務成績や付加価値に合わせて調整する必要がある。

 ●報酬の構成を変更する

 営業のマルチチャネル化が進み、チームでの活動が重視されるようになっても、営業担当者が各自の短期的な成果に紐付いた多額のインセンティブを得ている場合もある。

 報酬の構成を、給与の割合を増やしてインセンティブを減らしたり、個人よりチームの業績を反映した指標にインセンティブを連動したりするべき時代なのかもしれない。

 ●インセンティブ制度を再考する

 事務用品や医療用品のように、営業努力をまったく、あるいはほとんどしなくても繰り返し売れるキャリーオーバーセールスの比率が高い業界であっても、売上げ1ドルから歩合が払われることが多い。

 これを、売上目標を超えた場合にインセンティブが支払われる仕組みに切り替えれば、営業努力のモチベーションが高まり、成長を促進できる。

 ●評価指標と営業戦略を合致させる

 商品の利幅や戦略的価値が異なるにもかかわらず、営業担当者が合算で売上目標(全商品の総売上高)を達成すれば、インセンティブを得られる場合もある。このような仕組みを見直して、商品によって重要度が異なることを明確にするよい機会だ。

***

 このような営業部門の変革は、影響を受ける範囲が連鎖的に広がっていく。新しい営業プロセスは、営業の役割や組織設計に影響を与え、それが成功要因やインセンティブ制度にも波及するのだ。

 リーダーがこれらをはじめとする変革の課題に取り組む際は、営業部門の意思決定やプログラム全体にわたる調整が欠かせない。


HBR.org原文:Now Is the Time to Shake Up Your Sales Processes, October 23, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
新たな営業組織へと進化するための4つのポイント
法人営業の未来は女性部員を確保できるか否かにかかっている
未来が不透明な時に売上予測の精度を高める3つの戦略
DHBR2020年9月号「伝統企業のデジタル・トランスフォーメーション5つのステップ」