営業組織の規模を調整し、再構築する

 営業プロセスを再設計するにあたり、営業部門の規模と構造を再考する必要がある。業務がデジタルやバーチャルなチャネルに移行する際は、フィールドセールスの規模縮小を伴う可能性が高い。

 旅行業界や運輸業界のようにパンデミックで大きな打撃を受けている場合、営業部門のダウンサイジングは当然の帰結である。ただし、現場の人員削減はほかの業界でも行われている。

 製造装置を扱うある会社の場合、顧客は保守サービス用の画面を介したやり取りより、フィールドセールス・エンジニアが現場で技術的なサポートや受注納入を行うほうを好んでいた。しかし、パンデミックの最中では、フィールドセールス・エンジニアが訪問できず、顧客は「適切な」チャネルを介したサービスを受け入れざるをえなかった。

 すると、顧客は自分たちが思っていた以上に、サービス担当者の問題対応能力が高いことを知った。同社では対面営業が復活してからも、フィールドセールス・エンジニアを減らして、営業とサービスの重複を削減しようと計画している。

 多くの営業組織が、ダウンサイジングによるトラウマ(心的外傷)に直面しているが、クラウドサービスなどの業界ではアップサイジングの好機を迎えている。

 営業部門の増強は現場のニーズより遅れることが多いが、その理由は営業担当者が基本的に自分の顧客を手放したくないからであり、現場の人員を増やせば、当然そのような摩擦が生じる。

 また、パンデミックの影響で競合相手が弱体化している場合、アップサイジングは優位性を生み出すかもしれない。

営業の成功要因の変化に対応する

 営業のプロセスと役割を変えると、営業の成功要因は何なのかを再考する必要が生じる。特に、営業チームの既存メンバーの能力と新しい役割の要件が一致していない場合は、最も難しい取り組みになるかもしれない。

 パンデミックに際し、営業チームはデジタルを使いこなすことを強いられた。今後、営業担当者やマネジャー、リーダーには、さらに新たな能力が必要になるだろう。

 パンデミックの影響から回復したある工業用バルブメーカーは、営業の成功要因を再定義し、人間関係に基づく営業スキルよりも、情報を持っている顧客が好む、共感性が求められる価値観に基づいたアプローチに重点を置くようになった。この変化によって、男性中心だった営業チームに女性が増えている。

 チーム志向の高い営業担当者を登用することによって、マルチチチャネルの営業環境に適応している組織もある。また、構造化されたプロセスを指示する能力よりも適応力を重視するなど、セールスマネジャーに求められ能力も変化している。