双子の息子は、現在5歳。パートナーと私にとって最大の悩みは、夜泣きではなく、2人が幼稚園でちゃんとやっていけるかどうかに変わった。

 私自身も父親として、そしてリーダーとしての反省と経験を経て、厳しい事実を認めるようになった。育休をすべて取らなかったこと、そして本来ならば完全に自分を「オフ」にしなければならない育休中も働き続けたことで、父親として息子たちの気持ちに応えることができず、ともに育児を担うべき者としてパートナーの期待を裏切ってしまったこと。そして、リーダーとして模範となるべきにもかかわらず、会社で働く子育て中のスタッフを失望させたてしまった現実を、だ。

 繰り返しになるが、問題は会社の育休制度ではなかった。会社にはきちんとした制度があった。問題は、制度と実際の文化のギャップだ。私は「会社第一で、父親であることは二の次」という規範に貢献してしまった。

 息子たちが生まれたあの日に電話を取った時、私は意図せず、会社で働くほかの父親も同じようにしなければならないというメッセージを発信していたのだ。子育てに忙しい姿を見せれば、仕事への熱意が足りないと思われて、出世の道が遠ざかると示唆していたのだ。

 父親に優しくない組織文化は、ほかにも狡猾な形で浸透する。男性のリーダーやマネジャーは「理想の働き手」というイメージを誇示するために、子育てを分担していることを同僚に隠したり、使えるはずの柔軟な勤務制度を利用しなかったりする。そうした行動は、ほかの働く父親も同じようにしなくてはいけないというプレッシャーを与えることになる。

 ケア・ドットコムがコロナ禍の2020年夏に行った調査によると、働く父親の51%が、雇用者や同僚が理解してくれないのではないかと考えて、子育てで抱える問題を人に知られないようにすることがあるという。

 こうした行動は不健全であり、率直に言えば、働く父親に対する非現実的な期待を増幅せる。その結果、嘘まみれでバーンアウト(燃え尽き症候群)を踏み台にした文化を育てることになる。