
従業員の仕事の生産性を上げるために、リーダーはさまざまな方法を採用している。だが、その取り組みが十分な成果を上げていないことは明らかだ。問題は、導入するツールにあるのではなく、システムにあると筆者は指摘する。本稿では、従業員の生産性向上を実現するために4つのアドバイスを提示する。
リーダーは常に、従業員(および自分自身)の生産性の向上を追求している。
この取り組みは多くの場合、人事部が提供するタイムマネジメントの研修程度にとどまっている。それらの講座では、インボックス・ゼロ(受信トレイを空にする)、ポモドーロ・テクニック(一定時間ごとに休憩を入れて作業時間を分割する)、アイゼンハワー・マトリクス(タスクを「重要」と「緊急」に基づいて4象限に分ける)、GTD(5つのステップから成る生産性向上メソッド)といった、最大の生産性という約束で人々を誘惑する数々のアプローチの長所と短所も論じられる。
人々はいまだに、仕事に押しつぶされそうになり、メールに埋もれ、重要な優先事項に集中できない。このことを踏まえれば、これらの生産性ハックは目的を果たしていないといえるだろう。
問題は、これらのアプローチに内在するロジックにあるのではない。「ほとんどの人は孤立・単独で働いているわけではない」という、単純な事実が考慮されていないことが問題なのだ。人々は従業員同士の相互依存性を特徴とする複雑な組織で働き、えてしてその相互依存性こそが、個人の生産性に最も大きく影響を及ぼすのである。
メールの達人になることは可能でも、メールの量が爆発的に増えれば、どれほど急いでも受け取る連絡のすべてに対応するのは不可能だ(もちろんインスタントメッセージ、ツイッター、リンクトイン、スラック、その他無数のコミュニケーションツールも同様だ)。そしてアイゼンハワー・マトリクスを個人的に作成しても、進行中の仕事を中断してほかの何かを至急やるようCEOから求められれば、「緊急」と「重要」の区別は崩壊する。
伝説的な統計学者にして経営コンサルタントのW. エドワード・デミングは著書Out of the Crisis(未訳)の中で、ほとんどのトラブルと改善余地は、個人ではなくシステムの問題に帰属する部分が94%を占めると主張している。
筆者の考えでは、生産性向上についても大半は同様だ。個人的な解決法は役立つこともあるが、生産性の低さと非効率を防ぐ最善の手段は、個人レベルではなくシステムレベルで講じるべきである。
以下に4つの有効な対策を挙げたい。