危機が去ったら
合意を復活させる

 緊急事態は起きるものだ。あなたの娘が脚を骨折した時には、すべてを投げ打って、救急病院に連れて行かなくてはいけない。あるいは、プロダクトが予定通り納品されるように、正当な労働時間を超えて働くこともあるかもしれない。

 だが、緊急事態が終わったら、合意を復活させなくてはいけない。境界線について最初に強力な合意を結んでおけば、非常に容易なことだ。可能であれば、緊急事態に対応している間に、それをほのめかしてもよいだろう。なお、常に重要情報を最初に伝える。

・「今日の午後のプレゼンテーションはできません。娘を救急病院に連れて行くところなのです。娘の容態が安定したら、お電話してスケジュール変更が可能か検討します」
・「問題ない。あなたが重要なカンファレンスでシカゴに行っている間は私がやる。でも戻ってきたら、子どもの送り迎えは元通りのスケジュールにしよう」

 境界線に関する合意が何らかの事情で中断する場合には、合意を元に戻す必要があるだろう。

・「ええ、すべてを投げ打って飛行機に飛び乗り、その重要なクライアントに会って、私たちのテクノロジーで先方の問題を解決するよう努めます。ただし、来月戻ってきたら、現在の私の責任範囲で現在のチームを管理する仕事に戻りますので、そこはご承知ください」
・「おばあちゃんの家に泊まりに行っている時は、もっと長い時間テレビを見てもいい。でも、おばあちゃんの家には、おばあちゃんの家のルールがある。うちにはうちのルールがある」

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 奇妙なことに、あなたが主導権を握っている場合であっても、権威をひけらかすことが、あなたが望む境界線を引く助けにならないこともある。幼児のトイレ・トレーニングをしたことがある人なら知っているように、無理に進めようとするほど、抵抗は大きくなる。

 押しつけるのではなく説得することが、協力的な形で境界線を引く助けになる。そして、境界線を明確に設定して、それを行使するための会話が多いほど、その境界線が尊重される可能性は高くなるのだ。


HBR.org原文:Set Better Boundaries, January 13, 2021.