思いやりのあるセルフトークとは
どのようなものか
セルフ・コンパッションには4つの要素がある。優しい口調、誰でも経験する普遍的な痛みであると認識すること、ネガティブな感情を抑圧するのでも誇張するのでもないバランスの取れたアプローチ、そして自分が置かれている状況で最善の決断を下せると信じることだ。
実際にどのようなものか。3つの例を見ていこう。
まず、思いやりのあるセルフトークは、優しく支えるナッジになる。たとえば、私は自分に対して「私にはいま、何が必要か」と、よく問いかける。この言葉は、その時の状況で最も自分に思いやりがある選択をしてもよいという柔軟性を与えてくれる。
私は心配性で、あらゆることを細かく管理しがちなため、「この方法をしばらく信じてみよう」といったメッセージで気持ちが軽くなる。
時には、寛大な自制心が有効な場合もある。たとえば、先送りにしてきたタスクを終わらせるために精力的に働かなければならず、ひどく不安になる時は、セルフ・コンパッションの出番だ。私はこんなふうに言う。
「このタスクを始めたくないだろう。不安だからね。無理もない。いい仕事をしたいだけだ。いい仕事をする最善の方法は、少しずつやること。ずっとやり続ける必要はない。1日90分頑張ったら、後は気楽にやろう」
次に、思いやりのあるセルフトークは、冗談交じりの反論にもなる。たとえば、私はこれまで何百本というブログ記事を書いてきた。100万回以上読まれたものもある。それでも、「あまりうまく書けない。この問題について、独自の意見はないから」と自分を疑いがちだ。そうした時は真剣に悩むのではなく、気軽に自分に語りかける。
「そうだね、書き方を忘れてしまったのだろう。妖精が現れて、これまで数百本の記事を書いてきたスキルを、一夜にして奪い去ったに違いない。記事をシェアする人たちはみんな、つまらないと思っている。だからこそ、編集者はいつも機会をくれるんだ」。こうした傲慢さが、自分の能力とチャンスに対して、より現実的な視点をもたらしてくれる。
そして、思いやりのあるセルフトークは、完璧主義のような特性や傾向をリフレーミングするきっかけになる。自信を喪失して、完璧を追求するゆえに行動を起こせなくならないように、セルフ・コンパッションを利用しよう。
完璧主義者はセルフ・コンパッションを持ちにくい。しかし、自分を思いやることによって、自分自身についてバランスの取れた見方ができるようになり、すべてがうまくいかなくても(たとえば、あるプロジェクトであなたのパフォーマンスが不十分でも)、すべてが台無しになる(たとえば、キャリアが完全に終わってしまう)わけではないと理解できる。
完璧主義者は、「最初の1回で正確にやらなければならない」「チャンスは二度と来ない」と、自分に言い聞かせるかもしれない。こうした考え方は、何かを始めること自体を怖じ気づかせてしまう。
セルフ・コンパッションのある人は、自分にこんなふうに語りかける。「誰にでも死角はあるから、最初の挑戦で完璧にはできない。すべてを自分一人でやる必要はない。ほかの人の視点も参考にすればいいんだ。素晴らしい仕事は、そうやって完成するものだから」