(3)オフィス勤務の再開に伴い、男女の賃金格差はますます拡大し続ける

 多くの企業は、すでにハイブリッド型の勤務体系を採用しているか、2021年にそうした勤務体系への転換を計画している。オフィスでも自宅でも、あるいはそれ以外の場(カフェやコワーキングスペースなど)でも、どこでも好きな場所で働けるようになりつつあるのだ。

 企業の人事部門責任者たちの話によれば、そうしたハイブリッド型の勤務体系を採用した場合、女性従業員は引き続き在宅勤務を望む傾向がある。それに対し、男性従業員はオフィス勤務を再開したがる傾向があるという。

 最近のガートナーの調査によると、マネジャーの64%は、リモートワークで働く部下よりもオフィスで働く部下のほうが高いパフォーマンスを発揮できると思っていて、オフィスに出勤する部下の昇給幅のほうが大きい傾向がある。

 しかし、筆者らが2019年(コロナ禍以前)と2020年(コロナ禍中)のデータを調べたところ、現実はマネジャーたちの評価とは正反対だった。全面的にリモート勤務で働いている従業員は、全面的にオフィス勤務の従業員よりも、良好な成績を上げている人の割合が5%高かった。

 男性のほうがオフィス勤務を選択する割合が大きく、しかもマネジャーがオフィス勤務の部下を高く評価するバイアスを持ち続けるとすれば、男性従業員が過度に高い給料を受け取り、女性従業員が貧乏くじを引く可能性が高い。その結果として、ただでさえコロナ禍のダメージが男性よりも女性に重くのしかかっている中で、男女の賃金格差がいっそう拡大するだろう。

(4)新しい規制が導入されて、企業による従業員に対する監視が制約される

 コロナ禍の中で、従業員の仕事ぶりを監視できるテクノロジーを導入した企業は4社に1社以上に上る。しかし、そうした企業の多くは、従業員のプライバシーとのバランスをどのように取るべきかで迷っている。

 一方、会社による監視に対しては、従業員の反発も高まっている。ガートナーの調査によれば、自社が従業員のパーソナルデータを適切に扱っていると信じている従業員は、50%に満たない。会社がどのようなパーソナルデータを収集しているかについて、会社から情報をまったく受け取っていないという人も、44%に上った。

 2021年には、州レベルと自治体レベルで、企業が従業員を監視することを制限する規制が続々と導入されるだろう。おそらく地域によって規制の内容が変わってくるため、企業としては最も厳しい地域の基準を全従業員に対して適用せざるをえなくなる。

(5)勤務場所の柔軟性だけでなく、勤務時間の柔軟性も高まる

 2020年には、従業員がオフィスに出社せずに働けるようにすることが当たり前になった(この傾向は、2021年以降も続くだろう)。次は、勤務時間の柔軟性が高まりそうだ。

 ガートナーの2020年の「リイマジンHR・エンプロイー・リサーチ」によれば、一般的な週40時間勤務を採用している企業では、良好な成績を上げている従業員の割合は全体の36%に留まっている。それに対し、勤務する場所と時間帯、そして時間の長さに関して柔軟性を認めている企業では、従業員の55%が良好な成績を上げている。

 2021年には、あらかじめ決められた勤務時間数ではなく、仕事の成果により従業員を評価する職が増えるだろう。

(6)有力企業が従業員のために新型コロナウイルスワクチンの大量購入を行う一方、従業員にワクチンの接種を義務づけて裁判を起こされる企業も出てくる

 従業員にワクチンを提供し、それを材料に他社との差別化を行い、優秀な人材を獲得し、つなぎとめようとする企業が現れるだろう。一方、従業員が職場に復帰する条件としてワクチン接種証明を要求した結果、従業員から裁判に訴えられる企業も出てきそうだ。そうした訴訟に伴い、社会でワクチン接種が進んでも、出勤再開のペースはそれほど加速しないかもしれない。