仕事を通じたパーパスの追求は
数多くの恩恵をもたらす

 トムの行為を、大半の人が崇高だと考えるだろう。しかし、意外に思うかもしれないが、職場でソーシャルパーパスを追求する行為は、基本的に仕事での成功を損なうことはない。むしろ、キャリアの成功を後押しするのだ。

 研究によると、仕事にパーパスを取り入れる人はそうしない人に比べて、仕事の満足度とパフォーマンスが高く、より幸せで健康的であることがわかっている。

 ●仕事の満足度を高める

 筆者の研究によると、仕事にソーシャルパーパスが組み込まれている従業員は、組み込まれていない従業員に比べて、仕事の満足度が平均で13%高い。

 ほかの研究も、同様の結論に達している。たとえば、デンマークのシンクタンクであるハピネス・リサーチ・インスティテュートとキリスト教系労働組合クリファの調査によると、職場におけるパーパスの欠如は、デンマーク人が仕事に抱く不満の最大の原因となっている。欧州の別の研究では、仕事にソーシャルパーパスを取り入れると、2カ月以内に仕事の満足度が向上することが明らかになっている。

 ソーシャルパーパスを仕事の満足度に結びつける研究は数多くあり、あらゆるエビデンスを体系的に検証した研究チームは、その関係性に議論の余地はないと述べている。

 ●パフォーマンスを向上させる

 ある実験で、被験者はオンライン画像をスキャンして特定のパターンを探す作業を行った。無作為に選んだサブグループは、医学研究者を支援するために腫瘍細胞のラベル付けをしていると説明を受けた。ほかの複数のグループには、作業について特に文脈の説明はなかった。

 その結果、自分が人々の健康をサポートしていることを知っている労働者は、自分の仕事がソーシャルパーパスを促進していると思う根拠がない労働者に比べて、作業の質は同じレベルながら、より多くの画像を処理した

 別の研究では、自分がソーシャルパーパスを追求していることを知っている労働者は、知らない労働者に比べて、作業速度が24%速く、ダウンタイム(中断時間)は43%短くて、なおかつ質の低下は見られなかった。

 仕事でパーパスを追求することが業務に与えるポジティブな効果は、キャリアのより大きな成功につながる。複数の研究によれば、仕事にパーパスを取り入れることは、昇給する可能性が10%昇進する可能性が40%、それぞれ高くなることに関連しているという。