(1)自分のメールは短すぎないか
職場における読解力が低下している理由として明白なものの一つに、私たちは電光石火のごときスピードで行動することが多く、それゆえに詳細が無視されがちなことが挙げられる。ところが、私たちの多くは自分たちが考えているほど忙しくないのが現実だ。
加えて、素早く行動することの代償は高くつく。素早く動くこと、そしてそこから生まれる不安により、正確さや明確さを期すること、敬意を表することが疎かになってしまうのである。
そこで、コミュニケーションを取る際は、スピードを緩めて常に細かい点を確認するように努めよう。もし誰かがバーチャルミーティングに関してまとめた長文メールを送ってきた場合には、全体に対して漠然と返答するのではなく、メールの特定の部分について返事を出す。そうすることで、相手のメールを最後まで熟読するために時間をかけ、熟慮したことを示せる。
組織の上層部からの返事が簡潔なのは、珍しいことではない。いい加減なテキストメッセージ、それ以上にいい加減なメール、拙い文章、間違った文法、ひどいスペルミス。そこから得られるのは「そんなことを気にしている時間はない!」というメッセージだ。
ある投資銀行では「偉くなればなるほど、テキストメッセージやメールで謝意を表すのに必要な文字数が少なくなる」というジョークが、たびたび語られていた。新人の時は「ありがとうございます!」(Thank you so much!)と書いていたのが、1~2回昇進すると「どうも」(Thanks.)と短くなる。
短いメッセージによって重要人物のように見える可能性もあるが、チームや事業に悪影響を及ぼすおそれもある。ぞんざいなメールを受け取った側は、それがどういう意味なのかを判読するのに時間を要し、それゆえに遅れが生じたり、場合によっては手痛い間違いを犯したりする可能性がある。
また、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校教授で心理学者のダニエル・ガンラジによると、簡潔さを想起させる句読点、すなわち文章を終わらせる恐るべきピリオドを使うと、不誠実な印象を与えるという。
あるエグエクティブ(ここでは仮にトムと呼ぶ)は不注意で短いメッセージを書くことで、オフィスでも有名だった。ある時、直属の部下が彼にメールを送り、「この計画に基づいて進めてもよいでしょうか。それとも、追加情報を集めましょうか」と尋ねた。トムはそれに対して「はい」(yes.)と答えた。
(ありがとうございます、トム。進めてよいのか、両方すべきか、どちらもすべきでないのか、いずれでも対応できますが)
トムに対して、質問に答えていないことを誰かが指摘しようとしても、その前にどの程度待つべきかをチームで議論するのにどれほどの時間を無駄したか、想像してみてほしい。
リーダーシップの専門家であるジャクリン・コスナー博士は、いい加減なメッセージを送ることについてエグゼクティブにこう助言する。
「メール返信のための時間をつくるべきだ。それができないなら、あなたはその仕事には向いていない。誰か別の人物にその仕事を任せるべきだ。あるいは責任範囲の一部を任せる必要があるのかもしれない。なぜならば、解読しなければならないようなメールを送ることに、弁解の余地はないからである」
リーダーはすべてのメッセージに返信する必要はないが、重要な仕事に関する指示が求められている時には、少なくとも明確なコミュニケーションを取らなくてはいけない。
また、メールを送信する前に校正することを考える。多くの場合、誤解の原因は言葉が抜けていたり、誤解を生むような句読点の使われ方がされていたりすることにある。そこで、スペルチェックや他の校正プログラムを利用するとよい。
校正は習慣であり、スキルでもある。間違いや曖昧さのないメールを書くことを誇りにする。そうすれば、あなたが書いたことに人々はいっそう真剣に対応するようになるだろう。