(2)どのようなトーンを醸し出しているか
トーンとはメッセージ全体から感じられる態度や性格であり、これも読解力や文章力の高さに関わる重要な要素である。思いやりを伝えるうえで、これはおそらく他のいかなる要素よりも強力なツールだろう。
そこで次のように自問する。メッセージの受け手は誰だろうか。聞き手は誰だろうか。
デジタルコミュニケーションで苦闘しているクライアントに筆者が助言しているのは、メッセージの視覚的インパクトを必ず心に留めておくことだ。詳しく説明しよう。
私がコーチングを担当しているイーサンという若手のマネジャーが、経営幹部とのやり取りで自分は正当に評価されず、軽視されていると感じたことがあると話してくれたことがある。
イーサンは、この経営幹部の要請に応じて、自分のチームで生産性を上げるための詳細な計画を送った。それは従来と異なる働き方の提案で、計画通りに実行されれば、チームが業務の無駄な重複を避け、新たなレベルの透明性を築くのに役立つとイーサンは確信していた。
イーサンはこの計画の実行を楽しみにしていた。次のチームミーティングで議論できるように、具体的な課題まで包括していたからだ。ポジティブな反応を期待し、追加の質問をされる可能性も考えていたが、経営幹部からの反応は「k.」[編注]だった。
(失礼ですが、どういう意味でしょうか。「K」のあとに何が続くのでしょう。K-popのことではないですよね)
「k」の視覚的インパクトは、イーサンの明確で包括的な提案に対する回答としては、まったくそぐわなかった。この経営幹部は、イーサンの計画を検討したのだろうか。それとも、彼の計画は即座に却下されたのだろうか。
「k」とは、この計画を進めてよいと青信号を送っているのか。あるいは彼の提案は馬鹿げていると思い、先送りするためにさりげなく発した命令なのか。真意がまったくわからない。
しかもこの経営幹部は、アルファベット1文字以上の返事には値しないと思うほど、イーサンを軽視していたのか。「受領した。後で返事する」といったありふれた返事でさえ、「k.」だけの返信よりも敬意と気遣いを伝えられたはずだ。
イーサンの上司が示したトーンに対する鈍感さは、士気を下げ、混乱の種をまく可能性がある。誰かの多大な努力に対して1つの言葉あるいは1文字で返信すれば、それを受け取る相手に対する思いやりのなさを伝えることになる。
本質的に意味のある返答ができない時には、返事のための返事をすべきではない。もしメールの内容に気を配り、熟考したうえで返信を書く余裕がないと感じる場合には、取り急ぎメールを受領したことを知らせて、詳細に関してはできるだけ早く返事をすると伝えるべきである。