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新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、従業員のウェルビーイングに悪影響をもたらしている。女性従業員が感じるストレスは大きく、子どもを持つ女性、上級管理職の女性、黒人女性は厳しい状況に置かれやすく、特別に大きな負担を感じている。本稿では、職場における女性のメンタルウェルネスを向上させるために、リーダーが実行できる5つの行動を紹介する。


 新型コロナウイルス感染症は、従業員のウェルビーイングに大きな影響を与えている。マッキンゼー・アンド・カンパニーのセンター・フォー・ソシエタル・ベネフィット・スルー・ヘルスケアが実施した最近の雇用主調査によると、パンデミックが始まって以来、調査に回答した従業員の約3分の1が解雇やレイオフ(一時帰休)に対する不安を、28%がバーンアウト(燃え尽き症候群)を、21%が子育てに対するストレスを、20%が最愛の人の健康に対するストレスを訴えている。

 女性従業員のうち、職場復帰がメンタルヘルスに悪影響を及ぼすと答えた割合は男性従業員と同程度だった。しかし、職場復帰後に休みを取ったり、自分でスケジュールを決めたりする柔軟性が失われることを懸念する割合は、男性よりも12%ポイント高い。

 また、ほとんどの雇用主は、新型コロナウイルスが従業員のメンタルヘルスの負担になっていることを認識しているが、職場が提供するメンタルヘルスに関するサービスについての認識は雇用主と従業員との間で大きなギャップがある。

 マッキンゼーと非営利組織リーンイン・ドット・オーグが毎年発表している、職場における女性活躍に関する報告書「ウィメン・イン・ザ・ワークプレイス」(職場の女性たち)の最新版によると、新型コロナウイルスのパンデミック下で、キャリアのダウンシフトや離職を検討するきっかけとなった明らかな困難を訴えたグループが3つある。子どもを持つ女性、上級管理職の女性、黒人女性だ。その中でも大きな障壁として、メンタルヘルスへの負担が増したことによる、不安、ストレス、悲しみ(グリーフ)の増大が顕著だった。

 子どもを持つ女性は、子育てにより仕事のパフォーマンスを否定的に捉えられることを懸念する割合が、子どもを持つ男性の2倍に上る。以前から男性よりも熱心に働く必要性を感じてきた上級管理職の女性は現在、燃え尽き症候群に陥っている割合が高く、男性の28%に対して39%だ。

 また黒人女性は、上司からのサポートが少なく、職場でのマイクロアグレッション(偶然や無意識からくる差別的な言動)や深刻な差別を経験していることに加え、大きく報道されている米国の黒人コミュニティに対する組織的な暴力の被害や、パンデミックが米国の黒人に与える不均衡な影響に悩んでいる。

 雇用主は、従業員と彼らのメンタルウェルネスを積極的にビジネス戦略の中心に据えなければならない。たしかに、それは口で言うほど簡単なことではなく、時間と革新性、そして長期的な取り組みが必要だ。しかし、重要なのはまず始めることだ。

 職場における女性のメンタルウェルネスの向上のために、リーダーができる5つの行動を提案したい。