●シリアルタスクの手法を身につける

 親は、同時に多くの役割をこなさざるをえない。それぞれに異なる役割を引き受け、自分が面倒を見なくてはならない子どもの数に圧倒されて、いつも気が遠くなるように感じてしまう。ズーム会議に出席しながら、イライラしている子どもをなだめ、さらに別の子どものいら立ちもなだめて、といった具合だ。

 親は疲労困憊し、子どもたちはネグレクト(育児放棄)されていると感じるかもしれない。脳の構造的にマルチタスキングは不健康であり、ほとんどの場合で生産性も低いことは長年指摘されてきたが、コロナ禍はそれを間違いなく証明した。

 カルッチのクライアントのあるリーダーは「ポモドーロ・テクニック」を学んだ。いわば、脳のためのインターバルトレーニングのようなものだ。その手法は非常にシンプルであり、じゃまが入りにくい状態で超生産的に仕事をする。20分間集中して仕事をしたら、短時間休憩するというサイクルを繰り返す時間管理術である。

 仕事であれ子どもであれ、親にとってはわずか1時間でも、じゃまが入らず、集中できる時間を平日につくるのは極めて難しい。

 だが、このリーダーは「20分間なら、だいたい確保できるだろうと思いました」と振り返る。「子どもに『少し待っていて』と頼んだり、子どもがバーチャル体育のプログラムに参加している時間にズーム会議を終わらせたりすることができました。1回20分間集中することが、私の目標になったのです。たいていの場合、その目標を達成できました」

 現在も、リモート勤務と出社勤務のハイブリッド環境で仕事をしているリーダーにとっては、これからもタスクからタスクへ、オンライン会議からオンライン会議へと飛び回らなければならない状況は変わらないだろう。

 そうした中で、会議中にテキストメッセージやメールを処理するといった、脳を疲弊させる非生産的なやり方を続けていてはいけない。

 たしかにカメラをオフにすれば、ビジネスレビューをしながらでも、洗濯物をたたんだり、ランチを取ったりできるかもしれない。月間報告をまとめながら、オンラインスーパーで買い物をすることもできるかもしれない。

 しかし、短時間でもじゃまされることなく、集中できる時間を確保することで、1つのことに集中するという脳に備わった本来の能力を発揮することができる。そのほうが、やみくもにマルチタスキングを行って1日を終えるよりも、はるかに生産的だ。