5Gの取り組みはトップダウンによる改革断行が不可欠

 現在は海外企業が先行している5Gの分野ですが、日本企業が今後これらの勢力に追いつき、確固たるプレゼンスを確立していくには、多くの企業におけるトップダウンでの改革断行が不可欠です。

 アクセンチュアがまとめた調査レポート*によれば、先進的なデジタル技術を積極的に取り入れている企業と、他社の後追いで導入した企業を比較した場合、2015年から2021年までの6年間の間に、最大で5倍の収益率の差が生まれていることがわかっています。
*出典:アクセンチュアが、日本を含む25カ国、20の業界における4,300名(日本は200名)の企業経営層およびIT担当幹部を対象に調査

 こうした事実から明確に導き出される、重要なポイントがあります。それは、不確実な時代の中で持続的な成長を遂げるために、既存の硬直的なオペレーティングモデルに依存せず、新しい技術を積極的に取り入れながら、刻々と変わる状況に先手を打ち続けることです。

 それが実現できるか否かは、どれだけトップ自らが組織にコミットし、中央集権的なガバナンスを強化できるかどうかにかかっています。

 また、新しい事業やビジネスモデルの実践では、既存事業とのコンフリクトやリソースの再配分の問題が避けられません。それを的確かつ迅速に解決するためにも、5Gを含むDXのプロジェクトのリーダーシップはCxOをはじめとするエグゼクティブが担うべきです。そして、トップは明確なビジョンや力強いメッセージを継続的に社内に発信し、直属の実行部隊を指揮して改革を断行しなくてはいけません。

 以下で挙げるのは、トップダウンによる改革断行において必要となる代表的な3つのアクションです(図表2)。

① 潜在的な課題や顧客ニーズの棚卸し
5Gに限らず、社会や業界が抱えている課題や潜在的な顧客ニーズを棚卸しし、5Gと親和性の高い課題を特定
② 社内外の人材によるコラボレーション
特定した課題の解決に必要な能力・視点を持った人材を、社外も含めて組織横断的に選抜。さらに不足するDX人材の育成や外部からの獲得にも注力
③ トップ直轄の実行組織で変革をスピードアップ
大きな組織では、改革に対する反発も必ず予想される。実行部隊はトップの直下に配置し、トップのコミットメントによって、常にプロジェクトをスピーディに推進できる環境を整備

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図表2:トップダウンでの改革に必要な3つのアクションとは?