JVは日本企業がDX推進に取り組む上での有効な解

 では、5Gを活用したDXのような、過去に経験がない事業変革を進めていく場合、具体的にどのような組織・体制を構築すべきか。この段階で二の足を踏む企業の例は少なくありません。

 こうした「意欲はあるが踏み出せない、踏み込めない」という企業の声に対する、アクセンチュアのひとつの解が「ジョイントベンチャー(JV)の設立」です。

 これは、DX推進に取り組む企業とアクセンチュアが合同でDX推進のための子会社を設立するというものです。組織構成として、DX推進に取り組む企業本社のCEOの直下に「DX 戦略会議」を設置し、各事業部から出されるDX推進のテーマから、よりROI の高い案件を評価・選定し、プロジェクト化します。

 この一連のプロセスを支援するのがDX推進の子会社です。とはいえ、実際の案件の選定・推進にはデータサイエンスなどの高度な専門知識が不可欠です。ここをアクセンチュアのチームが、対等なパートナーとしてバックアップしていきます(図表3)。

 JVを活用した事業変革の中では、並行して人材育成も行います。各事業部から集まった社員とアクセンチュアのスタッフがワンチームで案件を推進するスタイル(2-in-a-box)で、社員側がアクセンチュアの専門家からノウハウを吸収し、すべてのスキル移管が完了した段階でDX 子会社は発展的に解消。社員はそれぞれの持ち場に戻り、全社的なDX推進をさらに加速していきます。

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図表3:外部企業とのJV設立はDX推進の実践的な組織作りにつながる

 アクセンチュアが提唱するJVの取り組みからは、すでにいくつもの成果が出てきています。その中から、以下で2社の事例を紹介します。

① 関西電力とのJV「K4 Digital」
・ 関西電力の既存事業の変革や新規事業の創出、顧客体験の最適化を支援するJV「K4 Digital」を設立
・ 電力設備に関する運用ノウハウや蓄積データにアクセンチュアの最新のデジタル技術の知見を掛け合わせ、デジタル化を加速
・ 事業アイデアや業務改革テーマの創出に加え、継続的にデジタル変革を進めていくために必要となる事業課題とデジタル技術に精通したデジタル人材を早期に育成

② KDDIとのJV「ARISE analytics」
・ KDDIとビッグデータ活用を推進するJV「ARISE analytics」を設立
・ KDDIのデータ分析ケイパビリティを強化してKDDIの顧客エンゲージメント向上を目指す

 こうしたJVによる企業のDX推進支援においては、アクセンチュアの持つデジタル人材育成のノウハウが随所に提供されています。アクセンチュアでは、自社が5年以上前にデジタルというコンセプトを掲げたのを契機に、デジタル人材の育成に多大な投資を続けてきました。

 この経験を通じて得られた豊富なノウハウやケーススタディをJVのパートナー企業に提供できる点は、まさにアクセンチュア独自の強みだと自負しています。今後、このJV設立のような取り組みが、日本企業のDX推進における実践的なモデルとして、さらに貢献していけることを願っています。

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