●スピードを落として、戦略的かつ長期的に考え、必要な時間を再設定する

「神話:現在のような新たな状況では、迅速に行動して、採用プロセスを加速しなければいけない」

 まさにいま、リーダーが直面している最大の課題は、迅速に行動し、できるだけ早く採用を決めたいという衝動に抗うことだ。

 急いで採用しようとすると、最も慣れ親しんだ採用方法に戻ってしまうことが多い。つまり、構造化されたプロセスに従うのではなく、勘に頼って近視眼的な決断を下すのだ。それでは、採用バイアスを生み出す状況をつくってしまうことになる。

 迅速に動いて、空きポジションを埋めてしまいたいという衝動やプレッシャーとは裏腹に、ダイバーシティ採用の取り組みは、スピードを落とし、戦略的かつ長期的なアプローチを取ることが重要になる。

 以下に紹介するステップは、どれもリフレーミングと行動変革を必要とする。その第一歩は、何をするにしても「一夜にして成らず」という事実を受け入れることから始まる。採用ポジションのそれぞれについて、以下のように対応することが必要だ。

・組織のダイバーシティに貢献しない採用を急ぐことで、どのようなインパクトが生じるかを考える。
・採用によって組織のダイバーシティが拡大するように、通常よりも時間をかける。
・採用プロセスに関わる全員に新たな期限を伝えて、共通理解を図る。

 ●「ダイバーシティ採用」の定義を見直し、これまで視界に入っていなかった過小評価グループを考慮に入れる

「神話:ダイバーシティ採用と目標を成功させる最も有効なアプローチは、人種やジェンダーのように、目に見えるダイバーシティの側面に焦点を絞ることだ」

 多くの組織は、ダイバーシティ目標を定めるにあたり、ジェンダーと人種の側面で比率を拡大することしか考えておらず、他の多くのグループを取り組みから除外している。

 筆者のチームが著書を執筆するために、100の組織を対象に検証を行ったところ、ダイバーシティの追跡および目標設定に障害者を含めている組織は半分に満たず(47%)、LGBTQ+コミュニティを含めている組織はわずか11%だった。

 ダイバーシティに関して真の進捗をもたらすには、まず、より包括的かつインクルーシブ(包摂)な多様性の定義から始める必要がある。

・採用の可能性がある12の過小評価グループについて、チームで議論する機会を設ける。
・チームを促して、過小評価されているコミュニティを認識していることを具体的に提示させる。この短時間でできるアセスメントを利用すれば、メンバーそれぞれのダイバーシティマップを作成することができる。
・組織の中で、特にダイバーシティが欠如しているのはどこかを考える。