●応募者に対して、より公平で構造化された、バイアスのない採用体験を確保する
「神話:ダイバーシティ採用の取り組みが有効であれば、他のことはすべてそのままでよい」
筆者らが実施した2021年1月の調査では、過小評価グループの求職者の62%が、採用プロセスでバイアスを感じていた。その大部分は、採用プロセスの重要部分が構造化されていないために一貫性がなかったこと、あるいはチームメンバーの訓練が不十分だったことが原因だ。
一貫性のある仕組みと訓練なしでは、採用決定者は自分の固定されたマインドセットに基づき、候補者に求められる資質を定め、客観的な尺度ではなく、直感や主観的な要因に基づいて決定を下してしまうことが多い。
採用プロセスの各ステップを見直し、それぞれの候補者が公平で一貫性のある採用プロセスを経て、客観的な決定に基づいた体験をできるようにしなくてはならない。
筆者らの調査では、大多数の企業の採用プロセスは、障害者には利用できないことが明らかになった。加えて、面接で生じるバイアスの多くは、構造化の欠如と、リーダーのインフォーマルなアプローチが原因であることがわかっている。
採用プロセスを応募者にとって公平にするために、いますぐ始められるステップを以下に紹介しよう。
・採用ページの応募フォームや採用システムを見直し、障害者が応募できるように是正するとともに、応募者が特別な対応を必要とする場合に書き込める欄を追加する。
・採用プロセスで生じる、公平な募集、選考、採用決定を妨げうる一般的なバイアスについて、チームを教育する。
・面接には構造化された採点表を導入し、面接をするチームメンバー全員がそれを利用するように促す。面接はすべて、開始前に準備時間を取り、終了後には採点表に記入する時間を確保しておく。
●新規採用者が新たなポジションで活躍できるように具体的な方法を定める
「神話:ダイバーシティ目標を達成するうえで最も困難かつ重要なのは、採用プロセスだ」
多くの企業が、最大のインパクトを与えるべくダイバーシティ採用の取り組みを推進しているにもかかわらず、過小評価グループ出身の新規採用者が新たな職務で成功できるようにサポートしていないのは、驚きを感じられるかもしれない。
筆者らが2021年1月に実施した調査では、新しい職務に就くオンボーディングプロセスで、適切なコミュニケーション、リソース、支援を受けたと答えた回答者は47%に留まっている。また、メンター制度やスポンサー制度を利用できたという回答者は22%しかいなかった。
過小評価グループの従業員がしばしば、十分な手引きもない状態で、不利な条件を克服し、新たな職務に就いていることを覚えておくことは重要だ。
多くの人材リーダーは、過小評価グループ出身の新規採用者の間で、離職率が著しく高いことを指摘する。たいていは、入社して3カ月以内の離職だ。これは、入社時から組織が適切なサポートを提供してないことが原因である場合が多い。新規採用者が入社日から活躍できる2つのステップは、以下の通りである。
・構造的で透明性のある、包括的なオンボーディングプロセスを確実に行う。新規採用者をサポートし、入社初期に彼らのウェルビーイングを確認する人を配置する。
・新規採用者に公式のメンター制度やスポンサー制度、あるいは非公式に同様の仕組みを利用できる機会を設定し、定期的にシニアリーダーとつながり、助言をもらえるようにする。互恵的なリバースメンタリングの仕組みを検討するのもよいだろう。リーダーも新規採用者から多くを学べるものだ。
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この1年間は、来る日も来る日も変化ばかり続いていたため、これ以上の変化に対応しなければいけないと考えるのは、気が遠くなるように感じるかもしれない。キャパシティもリソースも乏しい時には、なおさらだろう。
しかし、この状況を、本来ならば何年もかかっていたかもしれないダイバーシティを実現し、目覚ましい進歩を遂げる機会だととらえることが重要になる。従来型の思考を捨て、包括的かつ戦略的で、構造化されたダイバーシティ採用のアプローチを実践できれば、組織の従業員構成はやがて、社会をより正確に反映したものになるだろう。
"The Great Resignation Doesn't Have to Threaten Your DE&I Efforts," HBR.org, September 01, 2021.