
コロナ禍で燃え尽きたり、喪失感や悲しみを経験したり、社会的孤立を感じたりしていれば、そこから立ち直るのは容易ではないかもしれない。オフィスが再開しても、かつてのように仕事に喜びを見出せないことも少なくないだろう。だが、喜びという感情は、私たちのウェルビーイングや認知機能、そして仕事のパフォーマンスに欠かせない。喜びというポジティブ感情を喪失した根本要因を探り、それを取り戻すための4つの方法を紹介する。
「また仕事に喜びを感じられるようになりたい、それだけです。自分らしさを取り戻したいのです」と、スーザンは最初のコーチングセッションで私に打ち明けた。「前は、本当にやる気に満ちていたのに。仕事は気に入っていますが、いまは日曜日の夜になると気分が落ち込み、次の日から始まる1週間を考えると不安で仕方なくなるほどです」
そう感じているのは、スーザンだけではない。地域も業種も役職も異なる筆者のクライアントたち、すなわち自分の職業を愛してやまない意欲的なプロフェッショナルが「再び仕事に喜びを感じたい」と、筆者に訴えている。
それは、ふんわりとしたとらえ所のないものを、いたずらに求めているのではない。喜びは、私たちのウェルビーイングや認知機能、そして仕事のパフォーマンスに欠かせない感情反応と態度であることが研究によって示されている。
このポジティブ感情を日常に取り戻すには、なぜそれが失われたのかを理解することが役に立つ。答えは言うまでもなく「新型コロナウイルス感染症のパンデミック」なのだが、その何が具体的に問題なのかを検証する価値はあるだろう。
心理学者である筆者は、組織における野心的なプロフェッショナルの活躍について研究しているが、いまの不調には、4つの根本要因があると見ている。
まず、1年半ほど続いたストレスと悲しみで、私たちの誰もが燃え尽きてしまった。コロナ禍を上手に切り抜けた組織であっても、そのために必要な変革によってプレッシャーが増大した。私たちは絶え間ない不確実性に直面し、身を潜め、サバイバルモードで対応してきた。コロナ禍の経験は人それぞれだが、誰もが喪失感や悲しみに襲われた。
この間、本当は大丈夫ではないのに、大丈夫な振りをしなければならなかったために、私たちの多くは自分を偽っているという感覚にも苦しんだ。特に、自分が部下に頼られていることを知っているリーダーは、みずからを奮い立たせてきたはずだ。内なる自分と他者に見せる顔とが乖離し続ければ、心理的ウェルビーイングは損なわれてしまう。
また、自分の強みを常に発揮できていたわけではなかった。とにかくやるべきことを、できるだけ効率よく、現実的にこなしていかなければならないというプレッシャーがあった。こうした状況が、本来感じるはずの仕事の喜びを、私たちから遠ざけてしまった。
最後に、研究によれば、社会的孤立を感じると、認知的柔軟性や新しい物事への対応力など、認知能力と実行機能を低下させることが示されている。その結果、ネガティブ感情が高まり、自分のパフォーマンスや能力が低下していることに自己嫌悪を抱き、負のスパイラルに陥って、同じ仕事をしていても、かつてのような喜びが見出せなくなるのだ。
コロナ禍とその影響が長引く中、痛みや困難を感じている時に喜びを見出すことなどできない。だから、いま喜びを求めても仕方がない。そう思うかもしれない。
しかし、心理学者が指摘するように、喜びの不可思議な点は「苦しみがないこと」を必要としないことだ。むしろ、人は困難な時に自分にとって何が大事かに気づく。それゆえ、苦しみは充足感を得るための道筋にもなりうるのだ。
では、どうすれば喜びを取り戻すことができるのだろうか。
完璧を求めるのは違う。そうではなく、研究成果(と筆者が心理学者、そしてコーチとしてクライアントと接した経験)によれば、喜びとは、自分の強みを活かし、勇気と自分らしさ、感謝の気持ちを持って、心を通わせることによって得られるものだ。
いますぐ仕事の喜びを取り戻すために、お勧めしたい4つの方法を以下に紹介しよう。