●信頼できる同僚と語り合う
研究によれば、心理的ウェルビーイングには、自分らしくあることが欠かせない。だが、自分らしく生きるには、自分自身を理解することだけではなく、自分の考えや気持ちを安心して打ち明けられる環境に身を置くことが必要になる。
この1年半の間、多くの人にとって、仕事はそのような場ではなかった。自分が感じている以上のレジリエンス(再起力)を見せることを、何度も求められてきたからだ。
自分らしくあるという感覚を取り戻すために、信頼でき、本心を打ち明けることができる相手を職場で何人か見つけよう。この1年間に起きたことや経験したことを振り返り、どのような困難があったかだけでなく、ありがたさを感じたことも打ち明けよう(感謝と喜びは相互に強化し合うことが、いくつかのエビデンスによって示されている)。
これからの1年、どのような抱負や希望を抱いているか聞いてもらい、意味深い目標の達成に近づくには、何が自分の助けになるのかも伝える。
あるクライアントは、自分が悩んでいることを同僚に打ち明けるのをためらっていた。だが、いまは、この1年を一緒に振り返ってくれる相手を見つけ、自分が前進するためのサポートを求めることができている。
その後のコーチングセッションで、彼は仕事で再び喜びを得られるようになったと話した。また、リーダーシップをより有効に発揮できていると感じ、周囲からもポジティブなフィードバックを受けているという。
●仕事を通じて人間関係を再構築する
喜びは、単なる個人的現象ではなく、心理学者が「親和的」と呼ぶものでもある。つまり、相手に優しく親切にしたり、積極的に和解を働きかけたりといったポジティブ行動を通じて、他者との絆を深めるとされる。心理学者の中には、喜びの概念を「自分にとって大切な人との距離が縮まると感じられる状況にいる時の反応」と定義する人さえいる。
孤立感に打ち勝つには、オフィスが再開しつつあることもあり、さまざまな方法で有意義なコラボレーションに関わることだ。
たとえば、部下と「ウォーキング会議」を試してみよう。そこで彼らにとって最も大事なこと、彼らが考える大きな機会や課題、自分自身の機会や課題、そして共通の興味や価値観について理解を深める。
このようなつながりは、自分自身のエネエルギーを高めるだけでなく、チームの成果を向上させることにもつながる。こうしたつながりによって築かれた信頼は、協働の文化を育み、ひいてはチームの創造性を高める。
他者と有意義につながるためのもう一つの方法が、コーチングだ。研究によれば、思いやりのあるコーチングは、コーチングを受ける人とコーチ自身の双方に、精神生理的学的にポジティブな変化を与える。そして、このような変化には、リーダーが経験する慢性的で強いストレスによる心理的・生理的な影響を軽減する力がある。
あるクライアントは、この1年間、チームで一緒に仕事をしていても、メンバーとの距離がますます離れていくように感じていた。
彼女は筆者と行ったコーチングセッションに基づいて、毎週別の同僚とウォーキング会議を行うこと、そして毎週チームメンバーと個別にコーチングする時間をつくることにしたほか、社内でメンターを見つけ、月に1回会って近況を報告するようにした。以来、仕事全般にエネルギーを感じられるようになったという。
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この1年半は多くの人にとって、私生活でも仕事でも困難な時期だった。喜びに手が届かないことも、時にはある。コロナ禍による経済、ビジネス、社会、個人への影響が続く中、本稿で紹介したシンプルな方法を知っていれば、今後、たとえどのような状況になっても、喜びを見出す力になるだろう。