●自分の降格がチームに悪影響を及ぼさないようにする

 管理職から降りる際は、シームレスな移行に向けて入念な準備をすることも重要だ。異動前にチームの戦力を増強し、明確なサクセッションプラン(後継者育成計画)を立てるだけでなく、場合によっては自分のネットワークを積極的に活用して、適切な人材が後任に就くことをチーム外にも周知できるようにする。

 たとえば、現在の上司に次のように言うこともできる。「私の異動が、チームの成功にできるだけ支障をきたさないようにしたいと思っています。後任候補を何人か推薦します。彼らが受け入れられるように喜んで協力します」

 新しい役割にどのように移行するかは、どれだけ魅力的な非管理職の役割に就くかと同じように、あなた自身の評価を左右することを忘れてはならない。

 新しいマネジャーを手助けしながら、必要であれば、彼らが後任の座に落ち着き、あなた自身も個人プレーヤーとしての成功を測る指標が定まるまで、最初の数カ月は「ハイブリッド」で働くことを検討する。

 前述した筆者のクライアントは、非管理職としてプログラマーに戻るまでに、かなり長い時間を必要とした。彼自身は、以前と同じ仕事に戻るのだから、問題なく成果を出せるとわかっていた。しかし、まずは自分の後任、つまり事実上の上司になるのに適切な人物を慎重に選んだのだった。

* * *

 パンデミックの影響で、自分のキャリアを見直す人も増える中、部下のマネジメントから解放されたいと思う一方で、リーダーシップの役割から離れることが自分のキャリアにとってどのような意味を持つのだろうと、心配になるかもしれない。

 本稿で提案した戦略は、それがキャリアの後退ではなく、自分自身の幸福度や生産性を高めるための移行であり、それが誰にとっても有益であることを周囲に、そして自分自身に伝える一助となるだろう。


"You Can Stop Being a Manager Without Sinking Your Career," HBR.org, October 15, 2021.