Illustration by Vickie Sieczka

完全なリモートワークからハイブリッドワークへの移行が進む中、企業は、従業員同士の結びつきを再構築するという新たな課題を抱えている。リモートワークを通してチーム内のコミュニケーションが活発した一方、チームを超えた交流は明らかに減少した。その結果、組織内で分断化が進んでいる。本稿では、ハイブリッドな職場において、チームや部門の枠に囚われず、協働で共通の目標を達成するうえで有効な3つのアプローチを紹介する。


 従業員が徐々に、何らかの形でハイブリッドな職場に復帰するようになれば、相互の結びつきを再構築する必要がある。

 この1年半の間に社会的つながりや文化的結束が低下し、ほとんどの組織がある程度の分断を経験した。リモートワークにまつわる課題、急速に高まる不確実性、順調に進まないオフィス復帰、自分を正当に評価してくれない組織文化に嫌気がさした従業員の大量離脱などが、組織に対する帰属意識を脅かしている。

 それらに加えて、リモートワークにおける交流の大半は身近な同僚との間で見られるものであり、目の前の仕事に関するやり取りがほとんどだ。マイクロソフトの調査によると、パンデミック下で「グループ内」の交流が増えた一方、クロスファンクショナル(部門横断型の)コラボレーションは25%減少した。

 しかし、分断はリモートワークの副産物ではない。個々のグループや地域を意識的に結びつけるような工夫が欠けていることが原因だ。パンデミック以前から組織のサイロ化は見られたが、ハイブリッドワークによって、チーム同士が協力して共通の成果を達成するためには、彼らを効果的に結びつけなければならないという新たな必要条件が生じたのだ。

 相互の結びつきの再構築が特に重要な理由は、ほんどの人がパンデミック前と同じ状態で職場復帰するわけではないからだ。この1年半の間に、誰もが何らかの形で変化を経験した。価値観や優先順位が変わり、仕事の意義や目的意識により目が向けられるようになった。不安も拡大している。寛容さが高まった人もいれば、低下した人もいる。

 つまり、互いに「新しくなった」相手と再び関係を構築しなければならない。さもなければ、「過去の」相手に形成された先入観が働き、パンデミック前と同じような反応をすることで無用の不和が生じてしまう。

 たとえば、ある経営幹部は同僚について、「以前は最高のユーモアのセンスを持っていたが、いまでは、彼女がいつも笑っていたようなことを私が言ってもまったく反応がない」と語った。その幹部は、彼女の家族が新型コロナウイルスの深刻な影響を受けたため、精神的に疲弊していたことに配慮していなかった。

 以下の3つのアプローチは、ハイブリッドワークに移行したリーダーとそのチームが、組織の垣根を超えて強い結束を再構築するうえで、実際に役立っているものだ。