
リモートワークがこれだけ進んだにもかかわらず、働き方はほとんど変化していない。その結果、仕事量がさらに増加し、ワークライフバランスはますます崩れて、従業員の多くがストレスに悩まされている。企業はコミュニケーションのあり方を根本から見直し、非同期を前提としたシステムを構築する必要がある。本稿では、そのために有効な6つのツールを紹介する。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は本来、目的を達成するための手段であるべきだが、それ自体が目的になりやすい。それがDXの取り組みの70%が失敗している理由の一つだろう。デジタル化のためのデジタル化に留まり、大局的な視点を十分に持てていないのだ。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、さまざまなトレンドを加速させた。ストリーミング、eコマース、フードデリバリーなどのプラットフォームしかり、リモートワークの普及しかりだ。しかし、ほとんどの企業は、この機会を利用して働き方を改善するのではなく、悪い習慣が染みついたまま、オフィスを単にオンライン化している。
パンデミックの間、ほとんどの組織は、ワードプレス創始者のマット・マレンウェグが言う「分散型チームの5つのレベル」におけるレベル2に留まっている。会議を立て続けに行う代わりに、ズーム会議が立て続けに実施される。物理的に仕事をじゃまされることがなくなった代わりに、スラックやチームズを介して妨害されるようになった。
通勤時間がなくなったにもかかわらず、結局は以前よりも長時間かつ非効率に働くようになった。その結果、職場でのストレスになる2つの主な要因、すなわち仕事量のさらなる増加と、ワークライフバランスのいっそうの悪化を招いた。現在、米国の労働者の83%が職場でのストレスに悩まされている。そしてギャラップの調査によると、世界でほぼ同数の85%の人々が、仕事に対するエンゲージメントを失っている。
このような悪化は、もちろんコロナ禍の影響だ。『ネイチャー』誌に掲載されたメタ分析によれば、コロナ禍によって世界的に不安や抑鬱を感じる人たちの割合が増加している。成人のほとんどが起きている時間の約半分を仕事に費やしていることを考えると、これは悲劇としか言いようがない。
リモートワークのやり方を変える
リモートによる働き方の改善が切実に求められている。実際、世界各国の政府やビジネスリーダーは、「つながらない権利」の法制化を求めている。つながらない権利とは、仕事以外の時間に、仕事に関連した電子通信を遮断する権利だ。フランスでは2016年に導入されている。
ただし、「午後5時になったらログオフしなさい」と言うだけでは、過剰な仕事量やストレス増大の原因となる働き方の問題は解決しない。まったく的外れなのだ。
知識労働者から自律性や自己裁量を奪うような有害な規範が残ったままでは、応急処置で善意の解決策を実施したところで、ほとんど意味をなさない。リモートワーカーが健全に仕事をこなし、ワークライフバランスの問題を解決するには、過剰反応やリアルタイムのコミュニケーションから脱し、より非同期のコミュニケーションに移行すべきである。このコミュニケーション方法によってこそ、いつ、どこで仕事をするかを決定する自由を社員に与えられるのだ。
しかし、ベストセラーAtomic Habits(未訳)の著者であるジェームズ・クリアーによると、「人は自分が目標とするレベルまで上がるのではなく、自分たちのシステムのレベルまで落ちる」。
以下に、リーダーが働き方を改善するためのシステムを導入するうえで役立つツールを紹介する。