●タスクボード
人は平均して1日に約121通のビジネスメールを送受信し、約23%の時間を不要なメールに費やし、スラックなどのプラットフォームで週に約200通のインスタントメッセージを送信している。このようにメールやインスタントメッセージに依存していると、過剰反応のサイクルに陥り、結果的に6分に1回はメールをチェックして、1日中スラックにログインしたままになってしまうのだ。
タスクボードは、プロジェクトタスクの状況を透明性がある単一の情報源として示すので、メンバーがいつ何に取り組んでいるのか、進捗はどれくらいかを明確に把握できるようになる。
トレロ、アサナ、マンデー、ベースキャンプなどのタスクボードでは、コメントを残したり、質問を投げかけたりできる。メールやインスタントメッセージのようにリアルタイムの対応を求めるものではなく、非同期的な対応を促進する効果がある。
タスクボードの透明性は、コミュニケーション担当者が報告や進捗のアップデートを行う手間が軽減し、メンバーは長期的な目標に沿って仕事の優先順位を決めることができる。そして、重要なタスクではなく、緊急性が高いとされるタスクに気を取られる事態を防げるのだ。
●オフィスアワーとスケジューリングツール
「バートルビーの法則」によれば、「会議は出席者の80%の人の時間を80%無駄にする」。ハーバード・ビジネス・スクールのレスリー・パーロウ教授が主導した2017年の調査では、上級管理職の71%が、「会議は非生産的で非効率的」だと回答し、この仮説を裏付けた。この結果と、従業員が平均して35%から50%の時間を会議に費やし、ズーム疲れに苦しんでいる事実を踏まえると、会議依存に終止符を打つことが従業員の時間の解放につながるのは明らかだ。
そのためには、同僚の優先事項やコミットメントを無視して、相手のカレンダー上で見境なく会議の時間を予約することをやめる必要がある。そこで役立つのが、『大事なことに集中する』の著者カル・ニューポートが提唱したことで有名な「オフィスアワー」の概念だ。基本として、毎日・毎週の決まった時間枠を会議用に確保する方法である。時間枠は、急用や特別な事情に関係なく30分以内に制限し、各々の仕事のパターンに合わせて設定するのが理想的だ。
たとえば、朝型の人は午前中をディープワークのために確保しておき、夜型の人は午後の時間をそのようにすべきだろう。カレンドリーやエクス・ドット・エーアイなどのツールは、他人の優先事項を犠牲にすることなく時間枠を予約し、会議の効率を改善するのに役立つ。
●ドキュメントの共有
ドキュメントの共有を行えば、バージョン管理の負担なく、同じドキュメントの作業に非同期で取り組める。簡単に例を挙げると、グーグルドキュメントやドロップボックスペーパー、UIデザインツールのインビジョンなどのツールがあり、いずれもドキュメントへの注釈の挿入やチームメンバーのタグ付けに対応している。
ミロやミュラルのようなビジュアルコラボレーション・プラットフォームのホワイトボード機能は、リアルタイムと非同期の両方のブレインストーミングや戦略立案にも活用できる。また、ズーム会議中にリアルタイムで共有ドキュメントを使用すれば、重要なメッセージが失われたり、誤解されたりすることがなく、後日手直しが必要になる可能性やその負担を低減することにもつながる。