(1)顧客全般を語るのではなく、具体的な顧客について話す
考えてみてほしい。「顧客は私たちを頼りにしているのです!」という言葉と、「ケンズ・プラミング・サプライは、この注文に応えるために私たちを頼りにしています。私たちの力がなければ、納期に間に合わせるようにチームを動かすことができないのです」という言葉のどちらが、従業員エンゲージメントを高められるだろうか。
重要なのは具体性だ。顧客全般について漠然と語るのではなく、個々の顧客について細部を語ることで、顧客をよりリアルな存在に感じさせることが望ましい。さもなければ、従業員は顧客を生身の人間としてではなく、書類上の抽象的な数字としてとらえがちだ。
それぞれの顧客との間に具体的な結び付きを生み出すには、リーダー自身が顧客と頻繁に話すことを筆者らは推奨している。そのような会話をする際は、顧客がどのような製品・サービスを購入するかを尋ねるだけでなく、その製品・サービスが顧客の生活やビジネスにどのようなインパクトをもたらしているかを尋ねることだ。
そのうえで、特定の顧客について知り得た情報を、顧客との接点を持たないすべての従業員に伝える。顧客がどのような人たちで、いかなる行動を取り、日々どんな課題に直面しているかを具体的に伝えるのだ。
IT部門や財務部門、HR部門の従業員に対して、特定の顧客が自社の製品・サービスを通じて、どのように生活やビジネスを改善したかを説明する。それによりパーパスドリブンの精神を組織に浸透させられるはずだ。具体的な顧客に関するストーリーは、抽象的なバリュープロポジションよりも強く記憶に残りやすい。