(3)顧客との会議に管理部門のリーダーを同席させる

 顧客の存在をリアルに感じさせるうえで、実際に生身の人間と会うことに勝る方法はない。

 筆者らのクライアントである建築資材会社は、個々の顧客との年次会議に、管理部門のリーダーたちを招くことにした。サプライチェーンマネジメント、HR、安全管理をはじめとする各部門のリーダーが、実際の顧客と会う機会を設けたのだ。

 その結果、たとえバーチャル会議という形であっても、管理部門のリーダーの物の見方が変わった。自社がどんな顧客のためにビジネスを行っているのかをリアルに、そして直感的に理解できるようになったのだ。

 顧客の立場で物事を考えられるようになることに始まり、実際の方針が変わることに至るまで、さまざまな効果を目の当たりにした上層部は、この取り組みをさらに一歩進めることにした。担当が機能部門かどうかにかかわらず、すべてのリーダーに対して年に2、3回、顧客との会議に出席することを義務付けたのだ。会議の場で求められるのは、黙って話を聞くことだけだ。

 顧客との会議に同席した各部門のリーダーは、顧客のビジネス目標とニーズについて学んだ内容をチームメンバーに伝えることになっている。これを通じて、全従業員が顧客のことをいっそうリアルに感じられるようになった。

 財務部門のリーダーがいくつかの顧客との会議内容を説明するのを聞いた後、同部門で働く会計士は次のように語った。「それまで、顧客のことは数字としてしか認識していませんでした。いまでは、それぞれの希望と夢を持った企業だと理解できるようになりました」

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 顧客側の選択肢が増えたいま、リーダーがすべての従業員に自社の顧客を理解させ、顧客にどのように奉仕すればよいかを周知させることが極めて重要な意味を持つ。管理部門の従業員に顧客をリアルな存在として感じさせるのは、必ずしも難しいことではない。ただし、そのための努力は必要だ。

 本稿で紹介した3つの手法を用いることにより、組織の誰もが、自社のビジネスの生命線である顧客に直接目を向けられるようになるだろう。


"Have Remote Employees Lost Touch with Customers' Needs?" HBR.org, January 03, 2022.