●実際にどれだけの影響があるか、別の観点からとらえ直す
職場で泣いたからといって、そこでキャリアが終わるわけではない。一般に、泣いた人に対して周囲の人たちは想像以上に共感していることが、研究によって示されている。
2000人以上のシニアエグゼクティブを対象に行われた調査では、44%の最高経営幹部が「泣くことも時には許される」と考えており、別の30%は「泣いたとしても、職場でその人のイメージにネガティブな影響はない」と考えていることが示された。
このような事実を念頭に置いて、自分自身に思いやりを持とう。厳しく自己批判したり、決めつけたりするのはやめる。そんなことをしても、自分をさらに追い詰めるだけだ。その一瞬の出来事であなたの本質が決まるわけではなく、生きていれば壁に直面することもあると、自分に言い聞かせよう。
感情を持つことはごく正常で、職場にあってもそれは当然のことであることを覚えておいてほしい。むしろ適切に利用すれば、強大な力にもなりうる。職場で泣いたことを誇りには思えないだろうが、逆に感情があることで、より優れた意思決定を行い、他者に共感するのを助ける拠り所にもなる。
●深呼吸できる余地を自分に与える
感情がコントロールできなくなっているならば、あなたの状態はベストとはいえない。涙があふれてきたら、会話の中断を願い出よう。
たとえば、気持ちを落ち着かせるために5分間の休憩を取って部屋の外に出るか、カメラをオフにするとよい。視界に入るものを瞬時に変えて、何回か深呼吸すると、感情の高まりを速やかに落ち着かせるのに、驚くほどの効果がある。
研究結果からは、外部環境を変えて感情が及ぼす影響を低減するなど、状況の変化を試みるリーダーは、感情の高まりを上手に制御できていることが明らかになっている。
自分にはいま、深呼吸する余地が必要だと認識し、それを上手に願い出ることは、自己管理能力と感情的知性の高さを示すシグナルとなる。どちらもリーダーになくてはならない資質であり、ハイパフォーマーを抜きん出た存在にしている要因の90%を占める。
●泣いた事実を認め、勇気を持って対処する
反射的に謝罪の言葉を口にしたくなるかもしれない。感情的になりすぎたことや、周囲に居心地の悪い思いをさせたことを謝りたくもなる。しかし、それはやめよう。あなたが不利な立場になるからだ。
自分が誤った解釈をしている可能性があるだけでなく、自分を貶めることにもなる。加えて、自分の感情を抑えつけたり、何もなかった振りをしたりするのも避けたい。いつも言っていることだが、抵抗するとかえって長引くものだ。つまり、感情を抑え込もうとする時間が長ければ長いほど、感情はさらに高ぶるのである。
強さを持って対応するほうが、はるかによい。まず、自分が感情的に反応したことを隠そうとせず、その事実を認識するところから始めよう。そして、次のように言ってみる。「ご覧の通り、私はこのプロジェクトの成功に全力を尽くしています。だからこそ、私は感情的に反応しています(しました)」
ある研究によれば、自分の涙は情熱ゆえのものだと考える従業員は能力が高く、昇進の可能性が高いと見られていることがわかっている。





