●メンバーが自律性を発揮できるようにする

 チームの目標についてメンバーと意見が一致したら、いつ、どこで、どのように各自の業務を行なうかは、メンバー自身に判断させよう。5000人の知識労働者を対象にした最近の研究では、59%の人は、給料やその他の諸手当より働き方の柔軟性のほうが重要だと答えている。

 確実性と並んで、自律性は、脳が脅威と報酬を感じ取るプロセスに関わる5つの主要な要素の一つだ。人は自分で物事をコントロールでき、自分自身に選択権があると感じる時、モチベーションが高まり、ウェルビーイングも向上する。逆に、自律性がないと感じている時は、強いネガティブな反応が引き起こされ、集中したり、他人と協働したりする能力が失われかねない。

 それ以外に柔軟な働き方を実現する方法として、メンバーの裁量に委ねてかまわない意思決定はないかと考えよう。さまざまな意思決定の中には、リーダーによる先導が好ましいものもあれば、そうではないものもあるはずだ。

 たとえば、メンバーがどのプロジェクトに携わるか、誰の下で働くかについて、ある程度は彼ら自身に決めさせることはできないか。メンバーに自律性と選択権を与えられるならば、そうすべきだ。

 ●メンバーによる反論を許す

 メンバーが要求に「ノー」を言い、言い渡された締め切りに異を唱えてもかまわないと、はっきり伝えることが重要だ。あなたの主張に対する反対意見を述べるよう促そう。そして、簡単そうに見える課題をこなすために、実際はどれくらいの時間が必要かを尋ねよう。

 あなたの意見に異を唱えてもよいというメッセージは、はっきりと、繰り返し発信しなくてはならない。リーダーが自分とメンバーの間の力関係を見落とせば、リーダーの意見に反論することはおろか、自分の意見を述べることにすら恐怖を感じるメンバーがいても、その存在に気づけなくなる。

 メンバーが反論したり発言したりした時は、彼らの話にしっかりと耳を傾けよう。そして、相手の言葉を否定せず、実現できることとできないこと、業務のスケジュール、業務の障害を取り除くためにあなた自身ができることなどについて、双方向の対話(あるいは交渉)を行なうことが重要だ。

 リーダーに異論を述べることを許すという方針を明確に示さず、職場に心理的安全性をつくり出せなければ、メンバーは沈黙し、士気が低下し、燃え尽きが深刻化するだけである。そうなれば、退職するメンバーがさらに増加するという結果を招くことになる。

 メンバーの異論を許すことで、自分自身も一人のどこにでもいる人間なのだと認めることができる。人は誰もが何らかの欠点を持ち、燃え尽きに陥ることは誰の得にもならないのだと、メンバーに伝えることができるのだ。このメッセージが伝われば、課題が過酷すぎると感じた時、メンバーはその事実を率直に指摘しやすくなる。