負荷を軽くする

 ストレスの影響は積み重なる。身体と脳にとって、締め切りのプレッシャーも、夫婦喧嘩も、金銭的な悩みも、吠え続ける犬も、頻繁に固まるコンピュータも変わりはない。このような状況に対処するための忍耐力、自制心、大局観、注意力、分別はすべて、心理的な出所は同じだ

 多くの人々はすでに、その蓄えが追いつかない状態にある。コロナ禍前でさえ、「米国人にバーンアウトの症状が見られた」と、医師のルーシー・マクブライドは『アトランティック』誌に書いている

「米国は富裕国の中で最も不健康な国の一つである。鬱病、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、依存症をはじめとする絶望による病はすでに蔓延していた」とマクブライドは指摘する。コロナ禍以降、「生活のあらゆる部分で手間が増えた。(中略)育児、介護、仕事を従来の支援体制なしで、どうにかやりくりしなければならなくなった」のだ。

 ●ストレス要因を減らす

 自分自身や従業員の生活から、できるだけストレス要因を取り除く。誰もが全面的にストレスを軽減できるように、前向きな目標を立てよう。言ってみれば、心理的な省エネ計画だ。

 従業員が職場と家庭の最も重要なタスクをこなせるように、彼らの貴重な認知的・感情的エネルギーを温存するうえで、何ができるかを考える。従業員にアイデアを募れば、プロセスの改善や、日常生活を楽にする低コストの福利厚生や施策を思いつき、提案してくれるかもしれない。

 ●不安を増長させない

 悲嘆やトラウマに対して、リーダーができることは限られているかもしれない。しかし、不必要に不安を生み出すことがない組織文化を構築するために、リーダーができることはたくさんある。

 従業員は痛みを恐れている。自分が「愚かだ」「時代遅れだ」「状況を把握していない」と思われないか、恥をかかされないかと不安に思っているのだ。リーダーは、そのような不安を和らげることも、増長させることもできる。

 たとえば、ズーム会議中にホームオフィスが散らかっていても、子どもがふらっとやって来て映り込んでもかまわないことを従業員に伝える(何か問題がある場合は、その理由を説明する。「プロフェッショナルらしく見えないから」というのは、2022年の理由としては不十分だ)。

 会議の場を、つまらないと思われるかもしれない質問をしても、あるいは適切な質問やコメント、アイデアが思いつかなくても安全だと感じられる場にしよう。