認知的セーフティネットを構築する

 従業員が、どこかぼんやりしている。あなたはそれに気づいているだろうか。悲嘆、トラウマ、不安は、いずれも時間感覚や集中力を失わせ、老眼鏡を何度もなくすことにつながる。これまでのルーチンや環境から得られる手がかりを失ったり、生活の他の場面で行動の変化に慣れる必要があったりする場合は、さらに悪化する。誰もが、過剰な認知的負荷を経験しているのだ。

 ●間違いを減らす

 従業員が抱えている精神的負担を認める。チェックリストであれ、クロスチェックの手順であれ、バックアッププランであれ、業務に適した方法を取り入れて、重大なエラーを防ぐことだ。そのために新たな手法を導入することになる場合は、チームの信頼や自信の欠如につながらないよう注意する。

 いまは、企業の組織文化や価値観を、あらためて確認すべき時でもある。企業として、もしくはチームとして、「私たち」はどのような存在であり、何を標榜し、何をすべきかについて共通認識を強めることで、疲労困憊した従業員が判断を求められる回数を減らすことができるだろう。

 ●視野狭窄に陥る状況を減らす

 問題の一面にだけ注目して、些細な点や自分の興味の範囲に囚われる傾向も、ぼんやりとする一因だ。状況をあらゆる角度から見るために、ロールプレイや他のメンタルエクササイズを活用しよう。

 筆者らは、別の論考で次のように助言したことがある。「実行すべきことをチームで討論する際は、チームメンバーに対して『冷静に判断を下した確固たる理由』の後に『漠然としていても熱意ある理由』を、あるいは同じ要領で、最も悲観的なシナリオの後に最も楽観的なシナリオを一通り挙げてもらうとよい」

 そして、仮説的な物の見方を取り入れる。このプロダクトについて、宇宙人に説明するとしたらどうするか。200年前の人だったら、この問題をどのように解決するか。このように仮説を立てて考えることは、それほど負担ではない。創造的な人が実践している方法を真似るよう指示するだけで、創造性は高まるものだ

 特にミーティングの最後では、「この問題を本当に理解していない人がいたら、どのような質問をすると思うか」と尋ねてみる。自分に直接関わらないことであれば、相手の弱さや困惑を認めやすいからだ(どれだけ心理的安全性が高いチームであっても、自己防衛的な性格の持ち主はいる)。

 たとえば、従業員に自分のペットについて話してもらうこともできるだろう。オフィス再開を愛犬がどう受け止めているかと尋ねてみると、意外な展開が待っているかもしれない。

 ●失敗から学ぶ

 間違いや失敗は避けられないものだ。極限状態の従業員が、日々刻々と変化するビジネス環境に適用しようとしている現在は、なおさらである。あなたはどのように対処するだろうか。

 ハーバード・ビジネス・スクール教授のエイミー・エドモンドソンが実施した調査によれば、失敗を恥ずかしいと思わないチームは、過去の間違いから学び、問題解決や日常業務で新たな方法を実験することができるという。

 エドモンドソンは、悪い知らせを持ってきた従業員を攻撃するのではなく、報酬を与えるようリーダーに勧めている。従業員が自分の間違いを認めたり、あなたに対して問題や未知の出来事を報告するのを恐れたりしないようにすることだ。そうではなく、失敗についてチームで一緒に分析することで、改善策を見つけることができるだろう。