組織でリレーショナルポーズを実行する方法
リレーショナルポーズを実行するための時間と空間を見つけることは、難しいことのように思うかもしれない。この方法で相互のつながりを構築する価値があるのは、以下のシチュエーションだ。
●グループ会議のルーチンとして
リレーショナルポーズを定例会議や事前ブリーフィングの一部に組み込めば、それが必要になった時にいつでも実践できるようになる。会議の場を、仕事が人に及ぼす影響を知る機会にするのだ。
「何があなたのエネルギーになるか」「どのような時にエンゲージしていると感じるか」「不安や不満を生んでいるものは何か」と尋ねるとよい。深く耳を傾け、防衛的になったり、相手の言動に判断を下したりするのではなく、共感を持って対応する。
そして、時間をかけてテーマを探し、観察した内容を共有する。ある一連のプロセスがいら立ちの原因になっていないか。孤立を感じていないか。これらに「技術的なフラストレーション」や「顧客が原因のいら立ち」など、呼び名をつけると効果的だ。それぞれのテーマについて従業員に自分の経験を語ってもらうと、自分だけではないと理解できる。
●感情が高ぶっている時
グループのメンバーが熱くなっている、無礼になっている、またはやる気を失っていると感じたら、タスクから明確な距離を取って、チーム内で起きていることに目を向ける。
「タイムアウト」を取り、状況をメンバーに尋ね、何が起きているのか、それがどのような影響を及ぼしているかを話してもらうことにまず重点を置き、耳を傾けるよう促す。「異なる」体験の正当性を認めることは、特に重要だ。
問題解決法や解決策に飛びつくのは避けること。マネジャーはまず一歩下がり、会話をジグソーパズルのように捉えて、全体像を理解するために、メンバーとともに会話を組み合わせていくことが必要だ。このプロセスを通じて、個人がより強いつながりを感じることができる。
その後、これらの経験がグループのプロセスにどのような影響を与えているかを尋ね、最後に改善点についての会話を促す。チームが新たな交流方法を提案し、解決に向けて動き出したら、このタイミングで「タイムイン」を取り、学んだ内容を目の前の課題に適用する。
このような会話を行う際は、礼儀と思いやりを求め、それらが実践されている様子を目にしたらさらに促す。判断や非難をするタイミングではないため、そのような気配を感じたら(あるいは嘲るような眼差しなど受動攻撃性が見られたら)指摘し、規範を示す。
弱さや思いやりを示す人をたたえよう。そして、あなた自身が中立的な傾聴を実践するロールモデルでなければならない。
●喪失の儀式として
喪失を伴う仕事(特に病院や福祉施設などケアを提供する組織)では、感情を排除するのではなく、確認する儀式を行う機会がある。このような時こそ、模範を示し、率直に話をするチャンスだ。自分の経験を話すのをためらう人がいたら、まず自分の経験を話す。喪失が人間としての自分にどのような影響を及ぼしているかを共有し、弱さを見せる。
単純さを求める誘惑に負けず、簡単な答えはないと認めなくてはならない。それよりも、言葉にしにくい感情を確認し、自分が経験している痛みを認める。そして、他の人にも同じことを求めよう。
たとえば、米北東部のある大規模病院の緩和ケア病棟では、従業員が悲しみに対処するために、リレーショナルポーズを設けることをルーチンにしていた。患者が亡くなると、職員は一日の終わりに集まり、その体験が自分にとってどのようなものであったかを話すのだ。
メディカルディレクターは感情に焦点を当て、患者が亡くなってどのような感情が残ったかを職員に問いかけながら、会議を進めた。話し合いの中でメディカルドクターは、あらゆる経験や感情が正当なもので、理解できるものであると認識するよう努めた。次第に他のユニットメンバーも、自分自身と相手のためにそうすることを学んだ。
●ウェルネスの取り組みの一環として
従来のウェルネスの取り組みに関しても、リレーショナルポーズを取り入れることで深化させ、拡大させることができる。
ヨガや瞑想、読書会、スピンクラスなどを活用して、仕事で生じる感情的現実の確認および対処に焦点を当てることができる。それらの体験に、集団による共有と省察のための時間を組み込むことが可能だ。このように、セルフケアは個人の責任を強めるものではなく、真の意味でのつながりを実現する手段となりうるのだ。
たとえば、グローバル金融サービス企業のパシフィック・ライフ・リーのロンドン支社では、在宅勤務、メンタルヘルスケア、他者のケアなど、従業員が共通して関心を持つテーマを取り上げた「ティー・アンド・トーク」ミーティングを開催している。ホストは「ウェルネスチャンピオン」が務めるが、そこに決まったアジェンダはなく、参加者が経験や悩みを共有できる場を提供している。
このような集まりに参加することで、従業員は自分一人で悩んでいるとは感じなくなり、さまざまなレベルや部門の人たちと共通点を見出すことができる。